この記事は2025年8月18日にメールマガジンVol. 29として配信されたものです。
初回投稿日: 2025年11月17日
最終更新日: 2026年7月30日
私たちが日常生活を送る中で、避けて通ることができないのが「ごみ」の問題です。
家庭からは、生ごみ、容器包装、紙、衣類、プラスチック製品など、さまざまなごみが発生します。企業や店舗、飲食店などからも、多くの事業系ごみが排出されています。
ごみ問題には、
- 焼却に伴う温室効果ガスの排出
- 最終処分場への埋め立て
- 資源の使い捨て
- 海洋ごみ
- 処理施設の維持費
- 収集や分別を担う人手の不足
など、複数の課題が関係しています。
私自身、家庭ではごみ出しを担当していますが、普段どおり生活しているだけでも「なぜこれほど多くのごみが出るのだろう」と感じることがあります。
今回は、環境省が公表している最新の統計をもとに、日本のごみ排出量、処理方法、リサイクル率、焼却施設、最終処分場の現状について解説します。
日本では年間どのくらいのごみが出ている?
環境省の令和6年度調査によると、日本の一般廃棄物の総排出量は、年間3,811万トンです。
前年度の3,897万トンから86万トン減少し、2.2%の減少となりました。
ここでいう一般廃棄物には、家庭から出るごみだけでなく、事業所や店舗などから排出される事業系一般廃棄物も含まれています。
ごみの排出量は減少傾向
日本のごみ総排出量は、長期的に見ると減少傾向にあります。
令和元年度には約4,274万トンでしたが、令和6年度には3,811万トンまで減少しました。
減少の背景には、
- 人口の減少
- 自治体による分別回収
- 容器包装の軽量化
- 企業による廃棄物削減
- 3Rに対する意識の向上
- ペーパーレス化
など、複数の要因があると考えられます。
ごみ問題というと、排出量が増え続けている印象を持つかもしれません。
しかし、実際には社会全体の取り組みによって、排出量そのものは少しずつ減っています。
一人ひとりの行動は小さく見えますが、全国規模で積み重なることで、全体の数字にも変化が表れます。
1人が1日に出すごみの量
令和6年度の1人1日当たりのごみ排出量は、839グラムです。
年間に換算すると、1人当たり約306キログラムになります。
なお、この数字には家庭ごみだけでなく、事業系一般廃棄物も含まれています。
家庭系ごみだけで見ると、1人1日当たり466グラムです。
日常生活の積み重ねが大きな量になる
1日839グラムと聞くと、それほど多く感じないかもしれません。
しかし、日本全体で一年間積み重なると、3,800万トンを超える量になります。
私たちは、意図的にごみを増やそうとしているわけではありません。
それでも、
- 食品の包装
- 通販商品の梱包材
- 使い捨て容器
- ティッシュや紙類
- 壊れた日用品
- 食べ残し
- 買い替えた衣類や家電
など、日常生活のさまざまな場面でごみが発生します。
ごみを減らすためには、捨てる時だけでなく、購入する段階から考えることが重要です。
日本のごみはどのように処理される?
家庭や事業所から排出されたごみは、自治体のルールに従って分別され、それぞれ異なる方法で処理されます。
主な処理方法は次のとおりです。
- 焼却
- 破砕・選別
- 資源化
- 堆肥化
- 飼料化
- メタン化
- 埋め立て
自治体によって分別方法や処理設備が異なるため、同じ品物でも、地域によって捨て方が異なる場合があります。
焼却処理
日本で排出される可燃ごみの多くは、焼却施設で処理されます。
ごみを焼却すると、体積を大幅に減らすことができ、衛生面でも管理しやすくなります。
一方で、焼却には、
- CO2が発生する
- 焼却施設の建設や維持に費用がかかる
- 焼却灰の処分が必要になる
- 水分の多いごみは燃焼効率を下げる
といった課題があります。
特に生ごみは多くの水分を含むため、焼却前に水切りを行うだけでも、収集量や焼却時の負担を減らすことができます。
粗大ごみの処理
家具や大型の日用品などの粗大ごみは、回収後に破砕されます。
その後、
- 金属などの資源物
- 焼却できるもの
- 埋め立てが必要なもの
に選別されます。
粗大ごみのすべてが、そのまま埋め立てられるわけではありません。
再利用可能な金属などを回収したうえで、残った部分が焼却または最終処分されます。
資源化
びん、缶、ペットボトル、古紙、金属などは、分別回収後に再生原料として利用されます。
ただし、汚れがひどいものや、複数の素材が分離できないものは、資源化が難しい場合があります。
消費者が正しく分別することに加えて、製品を設計する段階から、分解や再資源化をしやすくすることも重要です。
堆肥化
堆肥化とは、生ごみや草木などの有機物を、微生物の働きによって分解・発酵させ、堆肥として利用する処理方法です。
焼却せず、処理後のものを農業や園芸に利用できる点が特徴です。
一方で、
- 臭気への対策
- 異物の混入防止
- 堆肥の利用先
- 処理する土地や設備
- 温度や水分の管理
などが必要です。
「生ごみを集めれば自動的に良い堆肥になる」というものではなく、適切な分別と管理が欠かせません。
飼料化
食品工場、飲食店、小売店などから発生する食品残さの一部は、適切な加熱や加工を行い、家畜用飼料として再利用されます。
食品を飼料へ再利用することで、焼却する量を減らし、輸入飼料の一部を代替できる可能性があります。
ただし、安全性や品質を確保する必要があるため、家庭から出る生ごみをそのまま飼料にすることはできません。
メタン化
メタン化は、生ごみなどの有機性廃棄物を、酸素の少ない環境で微生物によって発酵させ、メタンを含むバイオガスを取り出す方法です。
回収されたガスは、
- 発電
- ボイラーの燃料
- 都市ガスの代替
などに利用できます。
発酵後に残ったものを、肥料や土壌改良材として利用する取り組みもあります。
自治体によって異なるごみの分別
ごみの分別方法は、全国一律ではありません。
自治体ごとに、
- 処理施設の種類
- 資源物の引き取り先
- 人口規模
- 収集体制
- 地域産業
- 最終処分場の状況
が異なるためです。
28品目に分別する鹿児島県大崎町
鹿児島県大崎町では、家庭ごみを28品目に分別しています。
生ごみ、プラスチック類、紙類、金属類などを細かく分け、資源として再利用できるものを可能な限り回収しています。
大崎町のリサイクル率は、平成10年度の0.8%から令和5年度には83.0%まで上昇しました。
細かな分別だけでなく、住民への継続的な説明や、回収後の資源化ルートを確保してきた結果です。
分別項目を増やすだけでは、リサイクルは進みません。
住民が取り組みやすい仕組みと、回収した資源を実際に利用できる体制の両方が必要です。
日本のリサイクル率
令和6年度の一般廃棄物の総資源化量は738万トン、リサイクル率は19.3%でした。
前年度の19.5%から、わずかに低下しています。
日本のごみ総排出量は減少している一方、資源化される量も減少しているため、リサイクル率は20%前後で推移しています。
リサイクルだけでは解決できない
リサイクルは重要ですが、回収、選別、洗浄、輸送、再加工にもエネルギーと費用が必要です。
また、素材や製品によっては、
- 複数素材が接着されている
- 汚れが取り除けない
- 材質を見分けにくい
- 再生するたびに品質が低下する
- 回収量が少なく採算が合わない
といった理由で、リサイクルが難しい場合があります。
そのため、ごみ対策では、リサイクルだけに頼るのではなく、3Rの優先順位を意識する必要があります。
3Rとは
3Rとは、次の三つの取り組みを表した言葉です。
Reduce:ごみを減らす
Reduceは、そもそもごみになるものを減らすことです。
例えば、
- 必要以上に買わない
- 詰め替え商品を選ぶ
- 過剰包装を避ける
- 食品を使い切る
- 使い捨て用品を必要な時だけ使う
といった行動があります。
3Rの中では、最も優先順位の高い取り組みです。
Reuse:繰り返し使う
Reuseは、一度使用した製品を捨てずに再び使うことです。
例えば、
- まだ使える家具や家電を譲る
- リユース容器を使う
- 衣類を修理して着る
- 中古品を売買する
- 繰り返し使える食器や袋を選ぶ
といった方法があります。
製品を長く使うことで、新しい製品の製造に必要な資源やエネルギーも減らせます。
Recycle:資源として再利用する
Recycleは、使い終わった製品を原料へ戻し、新しい製品に利用することです。
ペットボトル、アルミ缶、古紙などが代表的です。
ただし、リサイクルを成立させるには、消費者の分別だけでなく、回収、再生、再生材料を使用する企業、再生製品を購入する消費者までを含む仕組みが必要です。
ごみ減量に取り組む自治体
環境省は、人口規模別に、1人1日当たりのごみ排出量が少ない自治体を公表しています。
令和6年度の上位自治体を見ると、人口50万人以上では東京都八王子市、人口10万人以上50万人未満では東京都日野市、人口10万人未満では長野県南牧村が1位となっています。
人口規模によって条件が異なる
人口の少ない自治体では、生ごみの自家処理や地域内での資源回収を進めやすい場合があります。
一方、大都市では、
- 集合住宅が多い
- 事業系ごみが多い
- 人口移動が多い
- 分別ルールの周知が難しい
- 堆肥化のための土地を確保しにくい
など、異なる課題があります。
排出量の数字だけで自治体の優劣を判断するのではなく、それぞれの人口規模や地域条件を考慮することが必要です。
日本のごみ焼却施設の現状
令和6年度末時点で、日本には991のごみ焼却施設があります。
前年度の1,004施設から13施設減少しました。
処理能力の合計は、1日当たり17万3,761トンです。
施設数は減少していますが、1施設当たりの処理能力は大きくなっており、小規模施設の統合や広域化が進んでいることが分かります。
焼却時の熱をエネルギーとして利用
ごみ焼却施設では、単にごみを燃やすだけでなく、発生した熱を利用する施設もあります。
令和6年度には、991施設のうち710施設、全体の71.6%で余熱が利用されていました。
余熱の主な利用方法は、
- 発電
- 給湯
- 温水プール
- 施設内の暖房
- 周辺施設への熱供給
などです。
発電設備を持つ施設は415施設あり、年間の総発電電力量は1万448GWhでした。
これは、環境省の換算では約267万世帯分の年間電力使用量に相当します。
ただし、熱を回収できるからといって、ごみを多く燃やした方がよいわけではありません。
まず発生を抑え、再利用や資源化が難しいものについて、焼却時の熱を有効活用するという順序が重要です。
焼却後にも残る最終処分の問題
ごみを焼却すると体積は減りますが、完全になくなるわけではありません。
焼却後には、焼却灰や飛灰が残ります。
一部はセメント原料などとして再利用されますが、再利用できないものは最終処分場に埋め立てられます。
令和6年度の最終処分量は306万トンでした。
最終処分場の残余年数は、全国平均で24.9年と推計されています。
残余年数とは、現在の埋め立て量が続いた場合、既存の最終処分場をあと何年使用できるかを示す目安です。
全国平均では約25年ありますが、新たな処分場の建設には、
- 用地の確保
- 周辺住民の理解
- 環境影響の確認
- 建設費用
- 長期的な維持管理
が必要です。
そのため、埋め立て量を可能な限り減らすことが重要です。
かつての埋立処分と「夢の島」
東京都江東区の夢の島は、かつて東京湾のごみ埋立地として利用されていました。
高度経済成長期には、生ごみを含む大量のごみが十分に焼却されないまま運び込まれ、悪臭やハエの大量発生などが社会問題となりました。
その後、焼却施設の整備や衛生管理が進み、生ごみをそのまま大量に埋め立てる処理から、焼却によって減量した後の灰などを埋め立てる方法へ移行しました。
現在の夢の島は、公園、スポーツ施設、植物館などがある地域として利用されています。
この歴史からは、現在のごみ収集や処理の仕組みが、過去の問題を受けて整備されてきたことが分かります。
生ごみの堆肥化は広がるのか
家庭ごみの中でも、生ごみは水分を多く含み、重量が大きくなりやすいごみです。
家庭や地域で堆肥化できれば、
- ごみの収集量を減らせる
- 焼却する水分量を減らせる
- 肥料として利用できる
- ごみを身近な資源として意識できる
といったメリットがあります。
堆肥化にも課題がある
一方、都市部で大規模な堆肥化を進めるには、次のような課題があります。
- 土地の確保
- 臭気対策
- 虫や動物への対策
- 異物の混入
- 継続的な管理
- 完成した堆肥の利用先
堆肥を作っても、利用する農地や需要がなければ、別の廃棄物になってしまう可能性があります。
堆肥化を進めるには、回収から利用までを含めた地域内の循環を設計する必要があります。
家庭用コンポストという選択肢
行政がすべての生ごみを回収して処理するだけでなく、家庭用コンポストや生ごみ処理機を活用する方法もあります。
自治体によっては、購入費用の一部を補助しています。
すべての家庭に適した方法ではありませんが、庭やベランダの状況、家族構成、管理できる時間などに合わせて選択することで、家庭から排出するごみを減らせます。
ごみ問題とプラスチック
家庭ごみの中には、多くのプラスチック製品や容器包装が含まれています。
プラスチックは、
- 軽い
- 丈夫
- 水に強い
- 衛生的
- 加工しやすい
- 安価に大量生産できる
という優れた特徴を持っています。
一方で、短期間で使い捨てられる製品が多く、焼却時には化石由来のCO2が発生します。
また、適切に回収されず自然環境へ流出すると、長期間残り続ける可能性があります。
一律にプラスチックをなくせばよいわけではない
プラスチックには、食品の保存期間を延ばしたり、製品を軽量化して輸送時の燃料消費を抑えたりする役割もあります。
そのため、単純にすべてのプラスチックを別素材へ置き換えるのではなく、
- 不要な使い捨てを減らす
- 製品を長く使う
- 単一素材化する
- 回収しやすい設計にする
- 再生材を使用する
- バイオマス原料を活用する
- 用途によって生分解性を検討する
など、製品の用途や処理方法に合った選択が重要です。
バイオプラスチックが果たせる役割
バイオプラスチックだけで、ごみ問題のすべてを解決することはできません。
バイオマスプラスチックを使用しても、ごみの排出量そのものが減るわけではありません。
また、生分解性プラスチックも、適切な環境や処理方法がなければ、期待した期間で分解しない場合があります。
一方で、目的を明確にして使用すれば、
- 化石資源の使用量を減らす
- 再生可能な原料へ切り替える
- 回収が難しい用途に生分解機能を付加する
- 未利用資源を材料として活用する
- 製品の環境価値を高める
といった役割を果たせます。
重要なのは、「環境に良さそうだから採用する」のではなく、製品の使用方法と使用後の処理までを考えて材料を選ぶことです。
まとめ
日本のごみ総排出量は、長期的には減少傾向にあります。
令和6年度の総排出量は3,811万トン、1人1日当たりの排出量は839グラムでした。
一方で、リサイクル率は19.3%にとどまり、306万トンが最終処分されています。
また、全国には991の焼却施設があり、その多くで焼却時の熱が利用されています。
日本のごみ処理は、衛生的な収集、焼却、資源化、熱回収など、高度な仕組みによって支えられています。
しかし、その仕組みを維持するためには、施設の建設・更新、収集、運搬、処理に多くの費用とエネルギーが必要です。
まずは不要なものを買わない、繰り返し使う、正しく分別するなど、私たちが日常生活でできることがあります。
企業側にも、材料の選定、製品の長寿命化、再利用しやすい構造、リサイクルしやすい設計などが求められます。
ごみを処理する方法だけでなく、そもそもごみを生み出しにくい社会や製品を考えることが、今後ますます重要になります。
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