技術コラム

自社製品にバイオプラスチックを導入する流れ|材料選定・試作・量産化のポイント

この記事は2025年2月17日にメールマガジンVol. 23として配信されたものです。
初回投稿日: 2025年5月16日
最終更新日: 2026年7月29日

環境配慮型製品への関心が高まる中、自社製品へのバイオプラスチック導入を検討する企業が増えています。
一方で、実際に検討を始めると、
「どの材料を選べばよいのか」
「既存の金型や成形機を使えるのか」
「試作から量産まで、どのように進めればよいのか」
といった疑問が出てきます。
バイオプラスチックは、既存の石油由来樹脂を単純に置き換えれば導入できるとは限りません。製品の用途や必要性能、成形方法、法令、コストなどを整理し、段階的に評価することが重要です。
この記事では、自社製品へバイオプラスチックを導入する基本的な流れと、試作・量産化で確認したいポイントを解説します。

バイオプラスチックを導入する主な目的

バイオプラスチックの導入を検討する背景は、企業や製品によって異なります。
代表的な目的として、次のようなものがあります。

化石資源の使用割合を減らす

バイオマスプラスチックは、植物などの再生可能な生物由来資源を原料の一部または全部に使用したプラスチックです。
既存の石油由来原料の一部をバイオマス由来原料へ置き換えることで、化石資源への依存低減を目指すことができます。
ただし、バイオマス原料を使用すれば、必ず製品全体の温室効果ガス排出量が減少するとは限りません。
原料の調達、製造、輸送、成形、使用後の処理までを含めて評価することが重要です。

使用後の処理方法を見直す

バイオプラスチックの中には、一定の環境条件で微生物によって分解される生分解性プラスチックがあります。
ただし、生分解性プラスチックは、どのような自然環境でも短期間で分解するわけではありません。
工業用コンポスト、家庭用コンポスト、土壌、海洋など、想定する環境によって必要な材料や認証が異なります。
そのため、使用後にどこで回収し、どのように処理するのかまで考えて導入する必要があります。

取引先や市場からの要求に対応する

取引先から、バイオマス原料の使用や特定の認証取得を求められる場合があります。
海外向け製品では、輸出先の規制や認証、表示ルールへの対応が必要になることもあります。
ただし、バイオマスプラスチックや生分解性プラスチックを使用すれば、すべてのプラスチック規制の対象外になるわけではありません。
EUでも、バイオベース、生分解性、コンポスト可能という用語を区別し、適切な用途と表示を求める方針が示されています。

環境配慮を分かりやすく伝える

バイオマス原料を使用した製品では、条件を満たすことでバイオマスマークなどの第三者認証を検討できます。
認証マークを表示することで、原料の特徴や環境配慮の取り組みを、取引先や消費者へ分かりやすく伝えられます。
ただし、マークを自由に表示できるわけではなく、製品の原料構成やバイオマス度などに関する申請と審査が必要です。

バイオプラスチック導入の流れ

自社製品への導入は、主に次の流れで進めます。

  1. 導入目的と対象製品を決める
  2. 要求仕様を整理する
  3. バイオプラスチックの種類を選ぶ
  4. 材料メーカーと成形メーカーへ相談する
  5. 小ロットで試作する
  6. 製品性能と成形性を評価する
  7. コストと量産条件を確認する
  8. 法令・認証・表示を確認する
  9. 量産後の品質管理体制を整える

ステップ1:導入目的と対象製品を決める

最初に、「なぜバイオプラスチックを導入するのか」を明確にします。
例えば、次のような目的があります。

  • 化石資源の使用割合を減らしたい
  • 取引先からバイオマス材料を求められている
  • 生分解性が必要な用途へ対応したい
  • 環境配慮型の新商品を開発したい
  • バイオマスマークを取得したい
  • 将来の規制や顧客要求に備えたい

目的が曖昧なままでは、材料を選ぶ基準も定まりません。
特に、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックでは、導入する目的が異なります。

  • バイオマスプラスチック:再生可能な生物由来資源を利用する
  • 生分解性プラスチック:特定の環境で分解する性質を利用する

両方の特徴を持つ材料もありますが、バイオマス由来であっても生分解しない材料、生分解性であっても石油由来原料を含む材料があります。

最初は対象製品を絞る

初めからすべての製品を切り替えるのではなく、試験導入しやすい製品を選ぶことが現実的です。
例えば、

  • 販売数量が比較的少ない商品
  • 期間限定商品
  • 環境配慮を訴求しやすい商品
  • 形状が比較的単純な部品
  • 既存製品の派生モデル
  • 試作と評価に時間を確保できる商品

などが候補になります。
量産数量が多い主力商品から始めると、材料費や成形条件のわずかな変化が大きなコスト増につながる場合があります。
まずは小規模な対象から試し、結果を確認して対象を広げる方法が進めやすいでしょう。

ステップ2:製品の要求仕様を整理する

材料を探す前に、現在の製品に求められている性能を整理します。
主な確認項目は次のとおりです。

  • 使用している樹脂
  • 成形方法
  • 製品の形状と厚み
  • 強度
  • 耐衝撃性
  • 耐熱性
  • 柔軟性
  • 耐薬品性
  • 色や光沢
  • 寸法精度
  • におい
  • 食品接触の有無
  • 屋内・屋外での使用
  • 想定使用期間
  • 使用後の回収・廃棄方法

すべての性能を既存材料と同一にすることが難しい場合もあります。
そのため、「必ず維持する性能」と「ある程度変更できる性能」を分けておくことが重要です。
例えば、外観は多少変わってもよいが耐衝撃性は維持する、バイオマス度よりも成形性を優先する、といった判断基準を決めます。

ステップ3:バイオプラスチックの種類を選ぶ

導入目的と要求仕様をもとに、材料の方向性を決めます。

バイオマスプラスチック

既存のPP、PE、ABSなどに、バイオマス由来原料を組み合わせた材料があります。
既存樹脂の特性を活かしながら、化石資源の使用割合を減らしたい用途に適しています。
用途例として、日用品、容器、家電部品、自動車部品、包装材などがあります。

生分解性プラスチック

PLA、PBAT、PBS、PHAなど、生分解性を持つ樹脂があります。
農業資材、コンポストバッグ、食品残渣と一緒に回収される製品など、使用後の回収・処理方法が明確な用途で検討されます。
生分解性が必要な理由が曖昧な場合は、通常のバイオマスプラスチックやリサイクル材の方が適している可能性もあります。

コンパウンドによる材料設計

既製品の材料で要求を満たせない場合は、用途に合わせたコンパウンドを検討します。
コンパウンドでは、次のような項目を調整できます。

  • バイオマス原料の種類と配合割合
  • 強度
  • 耐衝撃性
  • 柔軟性
  • 流動性
  • 外観
  • 分解速度
  • 成形方法への適合性

ただし、すべての項目を同時に最大化できるわけではありません。
バイオマス度、物性、成形性、コストのバランスを取りながら設計します。

ステップ4:材料メーカーと成形メーカーへ相談する

材料メーカーには、要求仕様と現在の成形条件をできるだけ具体的に伝えます。
例えば、次の情報があると検討しやすくなります。

  • 現在使用している樹脂のグレード
  • 製品図面
  • 製品重量
  • 成形方法
  • 金型の構造
  • 成形温度
  • 必要なMFR・MFI
  • 必要物性
  • 希望するバイオマス度
  • 色や外観
  • 年間使用量
  • 目標価格
  • 必要な認証や法令対応

材料だけでなく、実際に成形を担当するメーカーにも早い段階で相談することが重要です。
バイオマス原料を配合した材料は、流動性、乾燥条件、加工温度、収縮率などが既存材料と異なる場合があります。
材料メーカーと成形メーカーが情報を共有することで、試作時の問題を減らしやすくなります。

ステップ5:小ロットで試作する

候補材料が決まったら、まず小ロットで試作します。
試験片だけで物性を確認する方法もありますが、最終的には実際の金型と製品形状で評価することが重要です。
同じ材料でも、製品の厚み、ゲート位置、流動距離、リブ、嵌合部などによって成形結果が変わるためです。
試作時には、次のような項目を記録します。

  • 乾燥条件
  • シリンダー温度
  • 金型温度
  • 射出速度
  • 射出圧力
  • 保圧
  • 冷却時間
  • 成形サイクル
  • 不良の種類と発生率

条件を記録しておくことで、材料の調整や再試作が必要になった場合に原因を検討しやすくなります。

ステップ6:製品性能と成形性を評価する

試作品では、製品として必要な性能と、量産できる成形性の両方を確認します。

製品性能

  • 引張強度
  • 曲げ強度
  • 衝撃強度
  • 耐熱性
  • 耐久性
  • 寸法安定性
  • 耐薬品性
  • 外観
  • におい
  • 経時変化

成形性

  • 金型への充填性
  • ショートショット
  • バリ
  • ヒケ
  • ウェルドライン
  • 焼け
  • 銀条
  • 離型性
  • サイクルタイム
  • 成形品のばらつき

既存金型をそのまま使用できる場合もありますが、すべての製品で使用できるとは限りません。
材料変更により収縮率や流動性が変わると、寸法や嵌合に影響する可能性があります。
いきなり金型を改修するのではなく、まず成形条件や材料配合の調整で対応できないかを検討します。

ステップ7:コストと量産条件を確認する

バイオプラスチック導入のコストは、材料単価だけでは判断できません。
次の項目を含めて、製品1個当たりのコストを確認します。

  • 材料単価
  • 材料の使用量
  • 乾燥工程
  • 成形サイクル
  • 不良率
  • 金型改修
  • 物性試験
  • 認証取得
  • 包装や表示の変更
  • 輸送費
  • 在庫管理
  • 最小発注量

材料単価が少し高くても、製品の軽量化や設計変更によって使用量を減らせれば、コスト差を抑えられる可能性があります。
反対に、材料単価の差が小さくても、成形サイクルが長くなったり、不良率が上がったりすれば、総コストは大きくなることがあります。
量産を判断する前に、実際の成形結果をもとにコストを再計算することが重要です。

ステップ8:法令・認証・表示を確認する

用途によって、必要となる法令や認証が異なります。

食品用器具・容器包装

食品に接触する容器、包装、カトラリーなどは、食品衛生法への適合確認が必要です。
日本では、食品用器具・容器包装について、安全性が評価された物質を使用するポジティブリスト制度が導入されています。2025年6月1日以降の最新情報も厚生労働省から公開されています。
ベース樹脂だけでなく、バイオマス原料、添加剤、着色剤なども含めて確認する必要があります。

バイオマスマーク

製品のバイオマス原料使用を分かりやすく表示したい場合は、バイオマスマークの取得を検討できます。
申請には、商品原料構成表、バイオマス度計算書、原料に関する資料などが必要です。
材料がバイオマスマーク認定済みであっても、その材料を使った最終製品へ自動的にマークを表示できるとは限りません。
最終製品としての申請条件を確認します。

生分解性・コンポスト認証

「生分解性」「コンポスト可能」などの表示を行う場合は、想定する分解環境と対応する試験・認証を確認します。
根拠がない状態で、「自然に還る」「土に埋めれば分解する」などと表示すると、消費者へ誤解を与える可能性があります。

海外向け製品

海外へ輸出する場合は、国や地域ごとに、

  • 使用規制
  • 食品接触規制
  • 包装規制
  • 化学物質規制
  • 認証
  • 環境表示

を確認します。
「バイオプラスチックだから規制に対応できる」と判断せず、製品用途と輸出先に応じた個別確認が必要です。

ステップ9:量産後の品質管理体制を整える

試作に成功しても、量産では材料ロットや成形条件の変動により、品質にばらつきが生じる可能性があります。
量産前に、次の項目を整理します。

  • 材料の受入検査
  • 水分管理
  • 保管条件
  • 乾燥条件
  • 成形条件の管理範囲
  • 外観基準
  • 物性規格
  • 不良品の判定基準
  • 材料ロットのトレーサビリティ
  • 供給停止時の代替案

植物由来パウダーなどの天然原料は、産地や収穫時期によって、色や水分、粒径などが変動することがあります。
材料メーカーと許容範囲を確認し、量産時の管理基準を決めておくことが重要です。

バイオプラスチック導入でよくある失敗

バイオマス度だけで材料を選ぶ

バイオマス度を優先しすぎると、強度、外観、流動性などが製品に適さなくなる場合があります。
まず製品に必要な性能を整理し、その範囲内で適切なバイオマス度を検討します。

材料単価だけで判断する

実際のコストには、乾燥、成形時間、不良率、試験費用なども影響します。
材料価格ではなく、製品1個当たりの総コストで比較します。

処理方法を決めずに生分解性材料を採用する

生分解性材料を使用しても、通常の可燃ごみとして処理される場合、その特徴を十分に活かせないことがあります。
回収方法と処理環境まで含めて採用を判断します。

試験片だけで量産可能と判断する

試験片で良好な物性が得られても、実際の製品形状では成形不良や強度不足が発生することがあります。
既存金型による試作と実製品評価が必要です。

材料メーカーだけで検討を進める

材料メーカー、成形メーカー、製品設計者、品質保証担当者が別々に判断すると、量産直前に問題が見つかることがあります。
できるだけ早い段階から関係者で条件を共有します。

まとめ

自社製品へのバイオプラスチック導入は、次の流れで進めます。

  1. 導入目的と対象製品を決める
  2. 必要な性能を整理する
  3. 材料の種類を選定する
  4. 材料メーカーと成形メーカーへ相談する
  5. 小ロットで試作する
  6. 製品性能と成形性を評価する
  7. 総コストと量産条件を確認する
  8. 法令・認証・表示を確認する
  9. 量産後の品質管理体制を整える

重要なのは、単に既存樹脂をバイオプラスチックへ置き換えるのではなく、導入目的、必要性能、成形性、コスト、使用後の処理方法を総合的に検討することです。
初めから完成形を求めるのではなく、小ロット試作と評価を繰り返しながら、製品に適した材料へ調整する方法が現実的です。
VASUジャパンでは、バイオマスプラスチックや生分解性プラスチックの材料選定から、用途に応じたコンパウンド設計、小ロット試作まで対応しています。
強度、流動性、外観、バイオマス度、分解速度などの条件を確認しながら、既存材料からの切り替えや新製品開発をご提案します。
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