
みなさんこんにちは。日常生活の中で環境問題についてメディアで見聞きしますが、様々な問題の中でも「ゴミ問題」は、一般消費者にとって身近な問題です。ゴミを燃やした時に発生する温室効果ガスや、不燃ゴミの埋め立て、海洋ゴミ問題など、ゴミ問題といっても問題の種類は様々です。
そこで今回は、日本のゴミの現状について深掘りしてみたいと思います。ちなみに我が家では私がゴミ出し当番ですが「なんでこんなにゴミが出るのだろう」と思うくらい、一般的な暮らしを送っていてもゴミの量が気になっています。
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日本のゴミの排出量
日本のゴミの排出量の推移
さて、冒頭でも触れましたが、まずはゴミがどの程度排出されているのかについて取り上げます。環境省の令和元年(2019年)のデータによると、1年あたり約4,200万トンのゴミが排出されています。具体的なイメージが難しい量ですが、キログラムに換算すると、420億キログラムというとてつもない量です。余計わかりづらくなってしまいましたが、とてつもない量のゴミが排出されていることがわかります。
意外なことに平成22年(2010年)は、約4,500万トンのゴミが排出されていたので減少傾向にあります。ゴミ問題と聞くと、ゴミの量が右肩上がりに増えて手がつけられないイメージがありましたが、減少傾向の要因は、自治体や事業者によるリサイクルなどをはじめとした取り組みに加え、人口減少も要因だとされています。
「一人で取り組んでも世の中は変わらない」といった風潮がありますが、この減少傾向が証明している通り、小規模であっても着実に取り組めばいずれ結果はついてくると言えます。
1人当たりの1日のゴミの排出量
こちらも令和元年(2019年)のデータですが、1人当たり1日918グラムのゴミを排出しています。この数字はゴミの回収量と人口から求めた推測値であり、事業系のゴミも含まれていますが、1人あたり概ね1キロに近いゴミが毎日排出されていることを考えると、非常に量が多いことがわかります。年間に換算すると、1人あたり約335キロにもなることには驚きです。
悪意を持ってゴミの量を増やそうとする人はいないと思いますが、日常生活を送るだけでもこれだけの量が排出されています。ちなみに令和元年(2019年)の生活ゴミは約2,900万トン、事業ゴミは約1,300万トンです。
実現は難しいかもしれませんが、毎日の家庭ゴミの排出量を重さで記録して、減らすことにモチベーションが持てる仕組みがあれば、個々の取り組みが加速すると思います。他にも例えば自治体からゴミ減量ポイントをもらえたりするとより一層の取り組みになると思います。
様々なゴミ処理方法と実態
住んでいる自治体によって、様々なゴミの分別があることはご存知かと思いますが、分別されたゴミはそれぞれ異なる方法で処理されています。最も一般的な分別は可燃ゴミと不燃ゴミですが、掘り下げてみると様々な分別があります。
ご参考までに鹿児島県大崎町では、なんと28種類もの分別が行われています。後ほど取り上げますが、例えば「生ゴミ」という分別項目があります。

ゴミ処理の方法
焼却
最も身近な処分方法です。いわゆる可燃ゴミを焼却して処分する方法です。
粗大ゴミ
自治体によって異なるかもしれませんが、コンビニなどで処理券を購入し、ゴミに貼り付けて自宅から回収してもらうケースと、処理施設に直接持ち込むケースがあります。回収された粗大ゴミは破砕され、可燃部分と不燃部分に分けられ、可燃部分は焼却処分され、不燃部分は埋め立て処分されています。
堆肥化
あまり馴染みがないと思いますが、生ゴミなどの有機性廃棄物を堆肥化(肥料を作る)させる処分方法です。燃焼させないので環境にも優しく、堆肥として再利用できる処分方法です。ちなみに先ほどの大崎町の分別された生ゴミは、堆肥化による処分が行われています。
飼料化
こちらもあまり馴染みがありませんが、特別な処理を施し、生ゴミなどの有機性廃棄物を家畜の飼料として再利用する処分方法です。
メタン化
生ゴミなどの有機性廃棄物を発酵させ、メタンガスを取り出して発電などに使う処分方法です。
その他にも様々なゴミ処理方法がありますが、概ね上記のような方法で処理されています。私の個人的なイメージですが、堆肥化、飼料化、メタン化などのように「なんでも焼却」「なんでも埋め立て」ではなく、割とリサイクル的な処理方法があると感じました。尚、再利用できるものは資源ゴミとして回収されるので、上記の処理方法には含めていません。
自治体によるゴミの資源化の状況
さて、ゴミの中には様々な形でリサイクルして資源化可能なものが含まれています。先ほどの処理方法で取り上げた堆肥化や飼料化もリサイクルの一部ですが、他にも消費者に身近なリサイクルがあります。例えば容器包装や新聞紙、牛乳パックやペットボトルのリサイクルは、日常的に自然に取り組んでいると思います。
令和元年(2019年)のリサイクル率は約20%ですので、まだまだ改善の余地はありそうです。実際に消費者がゴミを出す前にできることもたくさんあります。見聞きされたことがある人も多いかと思いますが、Reduce(減らす)、Reuse(再利用する)、Recycle(リサイクル)の3Rです。普段からあえて使わない選択、再度使う選択をすることで、そもそもゴミの排出量を減らすことができます。
私は環境問題が取り沙汰されてから、コンビニやスーパーでカトラリーをもらうことはやめました。前述の通り私は我が家のゴミ出し担当ですが、家にある食器を使うことでゴミを出す量が減るので、環境にやさしい上に、少しでもゴミを出す回数が減るので助かっています。外出先にまで自前の食器を持ち出すことはありませんが、バランスよく両者使い分けして、できる限りゴミの量を減らしたいとの思いです。

3Rの取り組み上位の自治体
ゴミ処理は自治体の方針によって、様々な取り組みが行われています。従って自治体によって、3Rの取り組み度合いにも差が出てきますが、ここでは取り組み上位の自治体を取り上げます。詳しい取り組み内容は環境省のウェブサイトに掲載されていますので、ここでは特筆すべき部分のみを取り上げます。
Reduce(ゴミの排出量の比較)
50万人以上の自治体1位
- 東京都八王子市
- 1人当たり1日:770.1 グラム
50万人以上の自治体10位
- 神奈川県相模原市
- 1人当たり1日:868.4 グラム
まず最初にお断りをしておきますが、全国の自治体は1,700以上ありますので、1位の八王子市はもちろん、10位の相模原市も素晴らしい取り組みをしていると言えます。着目したのは、取り組み上位の1位と10位でも、100グラム程度の排出量の差があるという点です。
ゴミの例えに食品を出すのは気が引けますが、分かりやすさを優先して例えると、100グラムはおおよそカップ麺1個分です。1日のゴミの排出量でなぜ100グラムもの差が生まれるかというと、次のパートで述べますが、リサイクル率の高さとゴミ袋の有料化にあります。
有料化と聞くと何とも消費者にとっては耳の痛い話ですが、一方でリサイクル可能な資源ゴミの回収は無料とすることで、消費者としてゴミ分別に自ら工夫を凝らすモチベーションとなります。いずれにせよ素晴らしい仕組み作りであり、住民の意識と取り組みによって成り立っています。
上記は人口が50万人以上と、比較的規模が大きい自治体ですが、人口10万人未満の自治体ではどうでしょうか。
10万人未満の自治体1位
- 長野県川上村
- 1人当たり1日:294.9 グラム
10万人未満の自治体10位
- 長野県下條村
- 1人当たり1日:446.2 グラム
1位と10位は両方とも長野県ですが、実はベスト10のうち、8つの自治体が長野県となっています。やはりゴミ袋の有料化や住民のリサイクルへの意識が背景にあります。1位の長野県川上村の排出量は50万人以上の1位である八王子市と比較して、1人1日当たり約470グラムも少ないです。470グラムと言えば、おおよそ500mlのペットボトル1本分なので相当な量です。
実は川上村では自治体が生ゴミを回収しておらず、住民がそれぞれ堆肥化させているからなせる技です。生ゴミはその約80%が水分で、水を多く含むと燃焼させにくいこともあり、堆肥化による住民の負担は増えますが「ゴミの排出量が減る」「燃焼の妨げとなる水分が少ない」といった2点は、まさに一石二鳥な取り組みと言えます。
ゴミ焼却施設の実態
さて、ここまでは排出されるゴミの量にフォーカスを当ててきましたが、ここからは処理設備に関して掘り下げてみたいと思います。一般消費者としては、決められた日に、決められた場所にゴミを出せば回収してもらえますが、その後、可燃ゴミであれば焼却設備に運ばれます。焼却設備はどのくらいあり、どのくらいの量を1日に処理できるのかまとめました。

ゴミ焼却施設数と処理能力の推移
令和元年(2019年)の日本国内の行政によるゴミ焼却設備は、合計で1,067箇所あります。平成22年度(2010年)は1,221箇所ですので、約9年間で154箇所減っていることとなります。これは小規模な施設の効率的な統合や、人口減少によるゴミ排出量の低下、リサイクルなどの取り組みによって、設備が不要と判断された結果です。
ゴミ処理能力ですが、令和元年(2019年)は、1日約176,000トンです。イメージが難しいとてつもない数字です。前述の1日あたりのゴミ排出量が約4,200万トンで、これを1日分に換算すると約115,000トンですので、一日の処理能力は排出量をカバーできているといえます。ご参考までに、世界の国々と比べて日本のゴミ焼却設備数はとてつもなく多く、世界のゴミ焼却設備の半数程度が日本にあると言われており、これには驚きを隠せません。
昔のゴミ処理はどうだった?
「夢の島」をご存知ですか?高度経済成長期に東京都のゴミの処分場とされていた埋立地の別名です。1957年からゴミの埋め立て処分場として使われてきましたが、当時、生ゴミなども含め、焼却せずにそのまま埋め立てていたため、害虫などの被害が深刻化したそうです。
その後、焼却設備が各地に整備されたため、生ゴミをそのまま埋め立てることはなくなりましたが、現在でも焼却されて約20分の1となった量の焼却灰が埋め立て処理されています。夢の島は現在では夢の島公園として生まれ変わっています。
ゴミ焼却施設は焼却だけではない?
ゴミ焼却施設では、ゴミを焼却して終わりではありません。焼却の際に発生する熱は、温水、蒸気、発電などに活用されています。全国の焼却施設1,067箇所中、令和元年(2019年)では、740箇所で焼却時の熱が利用されていますので、約7割の施設にてエネルギーとして再利用されていることがわかります。
発電に利用されている熱について、平成22年度(2010年)は1トンあたり206kWhだったのに対して、令和元年(2019年)では、1トンあたり292kWhに向上しています。これは技術の進歩によって発電効率が向上しているということです。
堆肥化に関する取り組み
堆肥化とは?
堆肥化とは、生ゴミなどの有機物を、微生物の働きによって分解・発酵させて、肥料を作ることです。主にコンポストを用いて堆肥化が行われています。お気づきの通り焼却しないので地球環境に優しく、かつ肥料まで得ることができるゴミ処理方法です。
それならば、もっと行政が取り組んで、堆肥化設備の設置を進めれば良いと思いますが、現実はそうではありません。現在の日本は前述の通り、ゴミ焼却の際の熱を使って温水、蒸気、発電などに利用するサーマルリサイクルが進んでいたり、高度なゴミ収集と焼却プロセス体制が確立されています。
また、堆肥化には土地が必要ですので、都市部では導入が難しいこと、臭気など住民の理解を得るハードルが高いことも挙げられます。しかし今後少子化で人口が減少する日本では、堆肥化は将来有望なゴミ処理方法になるかもしれません。

堆肥化に取り組む自治体
一方で、着実に取り組みが進んでいる自治体もあります。これらの自治体では長年の啓発活動や、補助制度、小規模コミュニティー内の連携などで、堆肥化の導入と運用に成功しています。
小規模コミュニティーといえば、私はまず家庭ではないかと思います。仮に、行政の補助が出されて、各家庭で小型のコンポストを活用できれば、そもそも家庭から排出される生ゴミの量が減るので、究極の形ではないでしょうか?
長野県飯田市、静岡県袋井市、島根県雲南市は、日本国内でも堆肥化処理が進んでいる自治体です。