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Vol. 27 まずはこれだけで大丈夫! バイオプラスチックの基礎知識

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バイオプラスチックのイメージ

みなさまこんにちは。早いもので2025年も中盤に差し掛かり、4月に部署異動などがあった方は、対応に奔走されているのではないでしょうか。

そこで今回は、会社でSDGs関連部署が立ち上がった方、またその責任者となられた方のお役に立てばと思い、バイオプラスチックの基礎知識をご紹介させていただきます。

過去に何度か取り上げている題材ですので、本メールマガジンを初期からお読みいただいている方には、一部重複した内容である事、ご了承ください。

新規にSDGs関連の部署が立ち上がっていない場合でも、例えば取引先と話していて、バイオプラスチックの話題が出たり、将来的に自社商品への導入を検討されている方に読んでいただければと思います。

バイオプラスチックとは?

そもそもプラスチックですが、これは一般的には石油から抽出されるナフサという原料から作られています。そして石油に含まれる原料から作られているため、燃やすとCO2が発生するので、環境に悪いと言われています。

しかし、私たちの身の回りは、プラスチックから作られた物であふれています。例えを挙げるとキリがないですが、テレビの筐体、冷蔵庫の筐体、自動車の部品、ペットボトル、スーパーのレジ袋などなど、言葉の通りあふれています。

それくらい、私たち人類の生活から切り離すことができない素材ですが、昨今の地球温暖化を含め、環境面を危惧する声が世界中で高まっており、その改善策の一つとして、バイオプラスチックが脚光を浴びています。

バイオプラスチックと言っても、実は2種類のバイオプラスチックがあります。日頃バイオプラスチックと見聞きする物は、2種類の総称だとお考えください。

例えば「パソコン」といっても、WindowsなのかMacなのか、といったイメージです。2種類のバイオプラスチックですが、共通している事は、いずれも地球環境に配慮された素材という点です。
それぞれ「バイオマスプラスチック」「生分解性プラスチック」と呼ばれています。

バイオマスプラスチックとは?

バイオマスのイメージ

バイオマスプラスチックは、原料に再生可能な資源を含むプラスチックの総称です。例えば、とうもろこし、ジャガイモなどの穀物から抽出されたデンプンを原料に含んでいる素材、お米や木粉などが含まれている素材、卵の殻や貝殻が含まれている素材などが挙げられます。

これらの原料は文字通り再生可能な資源で、石油と違って枯渇の心配がありませんし、燃焼時のCO2発生量も石油より少ないことが分かっています。原料の全てが再生可能な資源で作られているバイオマスプラスチックもありますが、一般的には、原料の一部が再生可能な資源で、残りは石油由来というバイオマスプラスチックが多く流通しています。

「それならば全ての物をバイオマスプラスチックで作れば、もっと環境に良いのでは?」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、そこには幾つかの課題もあります。全てではありませんが、バイオマスプラスチックの主なメリット、デメリットを整理してみたいと思います。

メリット

  • 燃やした時のCO2発生量が石油由来プラスチックよりも少ない。
  • 再生可能な資源なので石油と異なり枯渇のリスクが低い。

デメリット

  • 価格が石油由来プラスチックよりも高い。
  • 含まれる再生可能な資源の割合によって物性低下のリスクがある。

それではメリットとデメリットについて、それぞれ解説したいと思います。

メリット「燃焼時のCO2発生量が少ない」

石油由来プラスチックは、原料である石油に炭素が含まれているため、燃焼させるとCO2が発生します。バイオマス素材であるデンプンなども炭素を含んでいますが、その量はバイオマス素材の方が少ないです。従って、燃やした時のCO2発生量が少なくなります。

また、炭素の出所にも着目する必要があります。石油に含まれる炭素は「化石燃料」という言葉の通り、遥か昔から地中で眠っている炭素です。石油を採掘することがなければ、目を覚ますことはありません。

しかし石油を採掘し、プラスチックを製造し、処分時に燃焼させることにより、現代に蘇りCO2となるイメージです。

一方、バイオマス素材が含む炭素は、光合成などによって吸収された「現代のCO2」が元ですので「育成時期に吸収されて燃焼時に放出されるサイクル」とイメージするとわかりやすいです。このことをカーボンニュートラルと呼びます。

メリット「枯渇のリスクが低い」

前述の通り、石油は化石燃料ですので、地球上に埋蔵されている量には限りがあるとされています。そのため、長い人類史では何度も枯渇のリスクが叫ばれてきました。

一方でバイオマス素材は再生可能な資源です。例えばとうもろこしやジャガイモなどの穀物は、大規模な天災などがない限り、栽培によって何度も収穫することができるので、枯渇のリスクが低いと言えます。

デメリット「価格が高い」

様々な企業からバイオマスプラスチックが提供されていますが、一般論として石油由来のプラスチックより価格が高いです。

石油由来のプラスチックは、安価で物づくりが容易な素材ですので、これだけ私たちの身の回りに溢れています。従って原料の価格が高くなると、これまでの販売価格では採算が合わないケースが想像できます。

また、商品やサービスを提供する企業側としては、資本主義の原理からして、できるだけコストを低く抑える努力をしますので、コストアップはなんとしても避けたいです。しかし、この状況を只々悲観する必要はありません。

市場では専門性の高い商品やサービスほど、高い価格設定になっていて、一般流通が深く広まっている商品やサービスは、妥当な価格に落ち着いてきます。例えば何らかの専門分野の業務用の商品は、専門分野かつ業務用ということもあって、市場での流通量も少ないです。

そのため、その商品を製造する企業も、原材料をまとめて多く仕入れることは在庫を抱えるリスクにつながるので、どうしても大量発注によるディスカウントの恩恵を受けることができません。また製造面においても一度に大量に作る方が安価となります。

一方で、一般流通が深く広まっていて、日常的に多く消費されている物は、ある程度需要の予測も掴めるので、原材料をまとめて仕入れ、まとめて製造、まとめて輸送することができるので、低コストの恩恵を受けることができます。

今後バイオマスプラスチックも流通量が増えてくると、価格は石油由来プラスチックに近づいてくると考えられます。

デメリット「物性低下のリスク」

前述の通りバイオマスプラスチックは、原料の一部に再生可能な資源を含んだ素材ですが、その含まれる割合が高くなるほど、石油由来のプラスチックと比較して、強度などの物性で違いが見られます。

物性とは、例えば何らかの成形品を作ったとして、落とした時に割れないか、曲げた時に折れないか、といったイメージです。再生可能な資源を原料に含むことで、一部向上する物性もありますが、低下する物性を無視する事はできません。

少し違った側面から見ると、石油由来プラスチックは、それだけ優れた素材であり、そうであるからこそ、私たちの身の回りに溢れていると言えます。しかし、価格と同じく、この状況を只々悲観する必要はありません。

バイオマスプラスチックの研究開発は今も進んでいますので、いずれ強度面で石油由来プラスチックと同等の物性を持つバイオマスプラスチックが誕生すると考えられます。また、一つの商品においても、強度が必要な部分は石油由来プラスチック、それほどでもない部分はバイオマスプラスチックと使い分けをすることで、物性面のリスクを低下させることができます。

生分解性プラスチックとは?

生分解性のイメージ

生分解性プラスチックとは、使用後の適切な処理によって、自然環境において無害で分解することが可能なプラスチックの総称です。原料には様々な種類がありますが、市場流通が多い原料はPLA(ポリ乳酸)と呼ばれる物です。

その他にもPBAT、PBSなど様々な種類がありますが、どれも共通しているのは、前述の通り自然環境において無害で分解可能なことです。分解するので焼却処分の必要はありません。更に、何らかの原因で自然環境に放置された場合でも、月日が経て分解するので、ゴミ問題の解決といった面でも注目されています。

分解と言っても、目の前で消えて無くなるのではなく、先ず紫外線や雨風による劣化が始まり、次に加水分解と呼ばれる、水分や湿気に反応する分解プロセスがあり、最終的には自然環境にいるバクテリアによって分解される仕組みです。

バイオマスプラスチックと同様に「それならば全ての物を生分解性プラスチックで作れば環境に良いのでは?」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、そこには幾つかの課題もあります。

メリット

  • 処分時のCO2発生量が石油由来プラスチックよりも少ない。
  • 生分解という機能が製品の付加価値となる。

デメリット

  • 価格が石油由来プラスチックよりも高い。
  • 分解に必要な期間は環境によって様々。

それではメリットとデメリットについて、それぞれ解説したいと思います。

メリット「処分時のCO2の発生量が少ない」

焼却処分であっても、生分解による処分であっても、素材に含まれている炭素の量が同じであれば、発生するCO2の量は同じですが、多くの生分解性プラスチックは、原料にバイオマス素材を含んでいます。

そのため、バイオマスプラスチックと同様、カーボンニュートラルによって、新たなCO2を発生させない効果があります。カーボンニュートラルについては、バイオマスプラスチックのメリットに記載しているので割愛させていただきます。

メリット「生分解という機能」

生分解性プラスチックは「最終的に分解する」ことを、製品の機能として付加することが可能な素材です。つまり何らかの用途で使った後に、回収する必要がないという側面です。

既に市場で導入が進みつつある生分解性マルチシートは、主に農業で使用されるシートで、畑を覆うことで湿度や温度の調整、土が崩れたりすることを防ぐ役割を担っています。

作物を収穫した後、広大な畑から全てのシートを回収する必要がありますが、生分解性を活かして、畑にすき込むことで、分解させることができます。これは一例ですが生分解することで効率化が図れる用途は数多く存在しています。

デメリット「価格が石油由来プラスチックよりも高い」

前述のバイオマスプラスチックと同様に、石油由来プラスチックよりも価格が高いです。ただし、今後の市場流通量が増えてくると、製造・輸送など様々な面で効率化が図れるため、石油由来プラスチックの価格に近づいてくると考えられます。

また、メリットにも記載していますが、生分解を製品の付加価値とすることで、全体でコストを見た時に、労力の削減につながる部分が多ければ、全体でのコストダウンを図ることも可能です。

デメリット「分解期間は環境に左右される」

生分解はバクテリアによって行われるので、バクテリアが多く活発に活動できる環境か否かで、分解の期間は大きく変わってきます。陸地であるか海洋であるか、また湿度や気温もカギを握る要素となっています。

湿度が極端に低い環境、また極端な気温ではバクテリアの活動が停滞しますので、生分解に必要な期間が長くなります。一方で、生分解の期間をコントロールしたり、短縮させる技術開発も行われていますので、近い将来、分解期間は一定的になると考えられます。

尚、これらは自然環境の話ですが、人工的な堆肥化施設では、気温や湿度がコントロールされていますので、分解期間のコントロールも適切に行うことができます。

バイオプラスチックは何に使われている?

バイオプラスチックの成形品のイメージ
バイオプラスチックの成形品のイメージ

ここまでにご説明した通り、バイオプラスチックには「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック」の2種類があります。 それぞれ特性を活かして、私たちの身の回りの物から、業務用や産業用まで、幅広い分野で使われています。

バイオマスプラスチック製の製品

バイオマスプラスチックは、前述のカーボンニュートラルの特性を活かし、主に使い捨てが想定される製品に多く採用されています。毎日の生活で大量に消費される物の場合、カーボンニュートラルの効果も大きくなります。

  • スーパーやコンビニのレジ袋
  • 歯ブラシやヘアブラシなどのアメニティ
  • 食料品などの容器包装
  • お弁当などを買うと提供されるスプーンやフォーク
  • 各種パッケージ類

後述しますが、バイオマスプラスチックで作られた製品を見分けるための認定ロゴマークがあります。普段のお買い物では意識する機会は少ないと思いますが、注意深く見てみると、割と多くの製品にバイオマスプラスチックが採用されていることがわかります。

今後、バイオマスプラスチックの価格が落ち着いてくれば、さらに多くの製品で採用される可能性が高いです。

生分解性プラスチック製の製品

生分解性プラスチックは、前述の通り「生分解すること」が製品の付加価値となり、採用が進んでいます。一方で、バイオマスプラスチックよりも価格が少し高いので、採用の速度はバイオマスプラスチックには劣ります。今後、価格が落ち着いてくれば、より多くの製品での採用が見込める素材です。

  • 農業用マルチシート
  • フィッシング用ルアー
  • 園芸用育苗ポット
  • ストロー
  • 各種袋

上記は一例ですが、やはりバイオマッスプラスチックと比べると、自然環境で使うことを想定した製品が多いです。今後生分解性プラスチックの導入が様々な製品で進むことで、一気にとはいきませんが、ゴミ問題解決の糸口につながると考えられます。

バイオプラスチックの認証

バイオプラスチックであるか、石油由来プラスチックであるかを、見た目や触った感覚で判断することは難しいです。極端な例ですが、石油由来プラスチック製の製品に「バイオプラスチックを採用しています」と記載しても、一般消費者は見分けがつきません。

そのため、各種専門機関で認証を受けた素材や製品には、認証されたことを示すロゴマークの使用が許可されます。このことによって、一般消費者が安心してバイオプラスチックを使用することができます。ここではどのような認証があるか紹介してみたいと思います。

バイオマスマーク

バイオマスマークは、一般社団法人日本有機資源協会 (JORA) が、バイオマスを利用した製品に表示できる目印として、認定審査しているマークです。一般消費者の方も目にする機会が多いマークで、製品に含まれるバイオマスの割合を示す数字が示されています。

バイオプラマーク

バイオプラマークは、バイオマスマークと似ていますが、運営団体が異なります。バイオプラマークは、一般社団法人日本バイオプラスチック協会が運営しておりバイオマスマークと同様に、バイオマスプラスチックを使った製品であることを識別するために使用されています。

生分解性プラマーク

生分解性プラマークは、バイオプラマークと同じ一般社団法人日本バイオプラスチック協会が運営している、生分解性プラスチックであることを表すマークです。
環境保護の法規制が厳しいEUにも、様々な認証があります。

バイオマスプラスチックに関する認証

生分解性プラスチックに関する認証

この様に様々な認証があるおかげで、一般消費者が安心してバイオプラスチックを使用することができます。

理想的なバイオプラスチックの活用

SDGsのイメージ

これまで、バイオマスプラスチック、生分解性プラスチックの双方について、どのような分野で活用されているか、どのようなメリット・デメリットがあるか説明してきましたが、ここで理想的な活用について考察してみたいと思います。

まずコスト面ですが、前述の通り市場への供給量が増えてくれば、石油由来プラスチックに近づいてくると考えられますが、それまでの間、どのようにコストアップ分を消化するかが論点になってきます。ビジネスは利益を生み出すことで継続しており、その仕組みは様々な企業が創意工夫を凝らして実践してきました。

従って、より利益を多く生み出す仕組みに奔走しているなかで、コストアップはなんとしてでも避けたい要因となります。「バイオプラスチックが環境に良いことは分かっていても、コストアップは避けたい」というのが本音ではないでしょうか?

そのような中で、市場にバイオプラスチックが使われた製品が導入されていますが「ブランドエクイティ」を作りだしたり、向上させたりすることが可能です。例えばアウトドアで活用される製品に、バイオプラスチックを採用することは、製品と自然の親和性が高い印象を消費者に与えることができます。

他にもコスメなどの商品は、バイオマス由来のパッケージなどと親和性が高く、世界観を作り出すことができると考えられます。また、アップサイクルとして牡蠣殻や卵殻をコンパウンドすることで、その風合いを表面に演出し、独自のナチュラル感を作り出すことができます。このように、導入によるコストアップは、ブランドエクイティの向上で吸収できればベストと考えています。
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