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Vol. 25 射出成形用バイオマスプラスチックの基本

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基礎知識のイメージ

近年、環境意識の高まりとともに、様々な素材が脚光を浴びており、その中でも射出成形用バイオマスプラスチックが注目を集めています。これは、カーボンニュートラルやSDGs(持続可能な開発目標)の達成、脱炭素社会の実現に寄与する素材として期待されています。

フィルムなどのバイオマスプラスチックの製品は、身の回りでも見かける事が多くなりましたが、射出成形用のバイオマスプラスチックは、様々な成形品での活用が可能です。本記事では、射出成形用バイオマスプラスチックの基本、活用事例、そして将来性について詳しく解説します。

バイオマスプラスチックについて

バイオマスプラスチックとは?

バイオマスプラスチックは、主に植物などの再生可能な有機資源(バイオマス)を原料としたプラスチックです。従来の石油由来プラスチックと異なり、再生可能な資源を含んでおり、CO2排出量削減の観点から環境負荷が低い素材です。

バイオマスプラスチックと聞くと「CO2削減」といった印象が強くありますが、実は「再生可能な資源」であることは大きなポイントです。私たちの日常生活では、様々な物を当たり前の様に使っていますが、それらが「再生可能な資源」で作られていると言うことは、人類が今後も地球で暮らしていくための重要なポイントです。

射出成形に適したバイオマスプラスチックは、従来の成形プロセスを大きく変更することなく使用できるため、産業分野での導入が進んでいます。

カーボンニュートラルとSDGsへの貢献

バイオマスプラスチックは、成長過程でCO2吸収する植物などの再生可能な資源を原料に使っているため、焼却時に排出されるCO2と相殺され、カーボンニュートラルな素材とされています。これにより、SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」に直接的に貢献します。

バイオマスマークの取得とPR効果

バイオマスプラスチック製品は、一定の基準を満たすことで日本有機資源協会の「バイオマスマーク」を取得できます。このマークは、製品が再生可能な資源を含んでいること示し、消費者への信頼感を高めるPR効果があります。

企業にとっては、環境意識の高い消費者層へのアピールポイントとなり、ブランド価値の向上につながります。コンビニやスーパーで日常的に買っている物に目を向けてみると、バイオマスマークが表示された商品が、割と身の回りに多くあることに気付かされます。

射出成形とは

ここまでの解説で、バイオマスプラスチックが環境に良いことはご理解いただけたと思います。成形に関連する業界の方には、釈迦に説法で恐縮ではありますが、射出成形についても少し触れておきたいと思います。

射出成形とは、熱した樹脂を「金型」と呼ばれる型に流し込み(射出し)、冷やして固めて何らかの形を作る事ができる成形方法です。例を挙げるのが難しいほど様々な物が射出成形で作られていますが、敢えて例を挙げると「リモコン」「パソコンのキーボードの一つ一つのピース」「テレビの筐体」など、多岐に渡ります。

今回は射出成形用バイオマスプラスチックをテーマにしていますので、射出成形自体については、別の機会で触れたいと思います。

射出成形用バイオマスプラスチックの活用事例

バイオプラスチック成形品のイメージ
バイオプラスチック成形品のイメージ

身の回りのあらゆる「モノ」へ活用可能

環境にやさしい「バイオマスプラスチック」と、あらゆる「モノ」を成形することができる「射出成形」の組み合わせによって、「環境にやさしいあらゆるモノ」を作り出すことができます。

容器

一言で容器と言っても、例えば食品容器などの使い捨ての容器から、収納を目的とした容器まで、種類は多種多様です。食品容器は包装容器は、「真空成形」と呼ばれる成形方法で作られることもありますが、射出成形によって作られるものも多く存在しています。収納を目的とした容器は、殆ど射出成形で製造されています。

日用品

日用品と言うのは正しいカテゴリーではないかもしれませんが、日常生活を送るうえで必要な「モノ」として捉えてください。歯ブラシ、掃除洗濯用品、衣類ハンガー、キッチン用品、掃除用品など、数多の「モノ」が射出成形によって作られています。

家電製品

家電製品も多くの部分が射出成形によって作られています。リモコン、テレビやプレイヤーの筐体、冷蔵庫、扇風機、エアコン、洗濯機の各種パーツなどです。容器や日用品と比較して、強度を求められるケースが多いですが、既に導入されています。

企業ブランドイメージの向上

バイオマスプラスチックを製品に導入することは、市場や消費者、投資家に対しての、企業としての環境への配慮に対するメッセージとなります。積極的にメッセージを発信することで、ブランド価値の向上や、満足度の評価につながり、結果として、持続可能なビジネスという印象を得ることが可能となります。

スーパーマーケットのイメージ

VASUの射出成形用バイオマスプラスチック

VASUは様々なニーズに対応可能なバイオマスプラスチックをご提案しています。成形方法が射出成形であっても、成形品によって、様々な種類のバイオマスプラスチックを使い分ける必要があります。

PP(ポリプロピレン)をベースにしたもの、PS(ポリスチレン)をベースにしたもの、ABSをベースにしたもの、PC(ポリカーボネート)をベースにしたものなど、その種類は多岐にわたります。

ラインナップ

PP + スターチ

石油由来のPPに、とうもろこし由来のスターチをコンパウンド(組み合わせた)した、バイオマスプラスチックです。 カトラリー、歯ブラシ、ヘアブラシなどの成形実績があります。最大60%のバイオマス度で、日本有機資源協会(JORA)のバイオマスマークを取得したラインナップもございます。

ABS + シェルパウダー

石油由来のABSに、牡蠣殻由来の炭酸カルシウムをコンパウンド(組み合わせた)した、バイオマスプラスチックです。 家電製品の筐体、部品などの成形実績があります。最大20%のバイオマス度で、日本有機資源協会(JORA)のバイオマスマークを取得したラインナップもございます。

HIPS + シェルパウダー

石油由来のHIPSに、牡蠣殻由来の炭酸カルシウムをコンパウンド(組み合わせた)した、バイオマスプラスチックです。 家電製品の筐体、部品などの成形実績があります。最大20%のバイオマス度で、日本有機資源協会(JORA)のバイオマスマークを取得したラインナップもございます。

PC + シェルパウダー

石油由来のPCに、牡蠣殻由来の炭酸カルシウムをコンパウンド(組み合わせた)した、バイオマスプラスチックです。PCはニーズに合わせてグレードのご指定も可能です。 産業機器の筐体、部品などの成形実績があります。

VASUのバイオマスプラスチックの特長

VASUの射出成形用バイオマスプラスチックは、お客様の様々なお声を元に、改良を重ねて来ました。

バイオのイメージ

臭気軽減

バイオマスプラスチックは特有の臭気があります。用途によっては、ご採用いただく事が難しいケースもありました。VASUでは、コンパウンド工程を改善する事で、最大限に臭気を軽減させました。

ナチュラルなオフホワイト

VASUのバイオマスプラスチックは、エコや自然を思わせる、ナチュラルなオフホワイトです。成形品を着色しなくても、消費者の方にそのイメージが伝わりやすいです。

量産時500kgからご提供

気軽にバイオマスプラスチックをご検討いただけるよう、最小オーダーロットは500kgとしております。

配合の変更でニーズに応じた強度

標準ラインナップをお試しいただき、強度面でご満足いただける結果が出ない場合、配合を変更して極力お客様が求める強度を追求します。

これまでの成形設備を活用可能

射出成形機金型共に、従来お使いの石油由来向けの成形設備をそのまま活用可能です。新たな設備投資は不要です。

優れた成形性能

これまで100社を超えるお客様で試作をお試しいただいており、その成形成の高さをご評価いただいています。

ABS, PC, HIPSなど豊富なベースプラスチック

一般的なPP, PEのみならず、ABS, PC, HIPSをベースとしたバイオマスプラスチックをラインナップしています。このことにより、様々な用途でバイオマスプラスチックをご活用いただけます。

バイオマスマース認定済み

VASUのバイオマスプラスチックは、日本有機資源協会のバイオマスマークを取得済みのラインナップがございます。お客様にて量産時にバイオマスマークを申請される際もサポートさせていただきます。

射出成形用バイオマスプラスチックの将来性

2030年に向けた環境省のバイオプラスチック導入ロードマップ

環境省は、2030年までにバイオプラスチックの導入を推進するロードマップを策定しています。この中で、バイオマスプラスチックの生産拡大や技術開発などが掲げられています。これにより、バイオマスプラスチック市場の拡大が期待され、関連企業にとって新たなビジネスチャンスが生まれることが期待されます。

金融庁によるプライム上場企業のCO2排出量公開

金融庁は、プライム市場に上場する企業に対し、温室効果ガスの開示義務化を検討しています。これは、企業の環境への取り組みを透明化し、投資家や消費者が評価できるようにするものです。バイオマスプラスチックの採用は、企業の温室効果ガス削減に寄与し、開示情報の充実化につながります。結果として、ESG投資の観点からも企業価値の向上が期待できます。

持続可能な社会の実現に向けて

射出成形用バイオマスプラスチックは、環境負荷の低減が可能な素材として、持続可能な社会の実現に大きく貢献します。今後、技術革新や生産コストの低減が進むことで、さらなる普及が見込まれます。企業はこの流れを捉え、積極的な導入と情報発信を行うことで、社会的責任を果たすとともに、競争力の強化につなげることができると期待されています。

VASUジャパンでは、小ロット25 kgから、試作用のサンプルをご提供しています。ご希望の方はお申し込みフォームから、お気軽にお問い合わせください。
お申し込みフォーム

バイオプラスチックレジンのイメージ
バイオプラスチックレジンのイメージ