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カーボンニュートラルとは?意味・取り組み・企業に求められる対応を解説

この記事は2025年11月17日にメールマガジンVol. 32として配信されたものです。
初回投稿日: 2026年2月16日
最終更新日: 2026年8月4日

気候変動への対応が世界的な課題となる中、「カーボンニュートラル」という言葉を見聞きする機会が増えています。
政府や大企業だけに関係する話と思われがちですが、温室効果ガスの排出は、原材料の調達、製造、物流、製品の使用、廃棄など、あらゆる企業活動と関係しています。
取引先からCO2排出量の提示を求められたり、環境に配慮した材料への切り替えを検討したりする企業も、今後さらに増えると考えられます。
この記事では、カーボンニュートラルの意味、脱炭素やカーボンオフセットとの違い、具体的な取り組み、バイオマスプラスチックとの関係について分かりやすく解説します。

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、人間の活動によって排出される温室効果ガスと、森林などによって吸収・除去される温室効果ガスを均衡させ、全体として実質ゼロにすることです。
日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、2050年カーボンニュートラルの実現を目指しています。
ここで重要なのが、排出を完全にゼロにするという意味ではないことです。
まず可能な限り排出量を減らし、それでも避けられない排出について、森林による吸収やCO2の回収・除去などを利用して差し引き、実質的にゼロを目指します。

対象はCO2だけではない

「カーボン」という言葉から、CO2だけを対象とする取り組みに見えますが、カーボンニュートラルでは一般に温室効果ガス全体を対象とします。
代表的な温室効果ガスには、次のようなものがあります。

  • 二酸化炭素(CO2)
  • メタン
  • 一酸化二窒素
  • 代替フロン類

これらは種類によって温室効果の強さが異なるため、CO2に換算して排出量を管理します。

排出量と吸収量を均衡させる

カーボンニュートラルの基本的な考え方は、次のとおりです。
温室効果ガスの排出量-吸収・除去量=実質ゼロ
ただし、吸収量を増やせば、排出量を減らさなくてもよいわけではありません。
森林が吸収できる量には限りがあり、将来も同じ量を吸収し続けられるとは限らないためです。
カーボンニュートラルを実現するには、排出量そのものを大幅に削減したうえで、削減しきれない部分を吸収・除去で補う必要があります。

なぜカーボンニュートラルが必要なのか

石炭、石油、天然ガスなどの化石資源を燃焼すると、長期間地下に蓄えられていた炭素がCO2として大気中へ放出されます。
産業活動や交通、発電などによって大気中の温室効果ガスが増加すると、地表から宇宙へ放出される熱の一部が大気中にとどまりやすくなります。
これが地球温暖化を進める要因となります。
温暖化は、単に夏の気温が上がるという問題ではありません。

  • 極端な高温
  • 大雨や干ばつ
  • 海面上昇
  • 農作物の収量や品質への影響
  • 水産資源の分布変化
  • サプライチェーンの寸断
  • 熱中症などの健康被害

といった形で、暮らしや企業活動にも影響します。

カーボンニュートラルと脱炭素の違い

カーボンニュートラルとともに、「脱炭素」という言葉も広く使われています。
両者は近い意味を持ちますが、視点が少し異なります。

カーボンニュートラル

温室効果ガスの排出量と吸収・除去量を均衡させ、全体として実質ゼロにする到達目標です。

脱炭素

化石燃料の使用削減、省エネルギー、再生可能エネルギーへの転換などを通じて、温室効果ガスの排出を減らしていく取り組みや社会の方向性です。
つまり、脱炭素の取り組みを積み重ねた先に、カーボンニュートラルの実現があります。

カーボンオフセットとの違い

カーボンオフセットとは、可能な限り排出量を削減したうえで、どうしても削減できない排出量を、別の場所で行われた削減・吸収活動によって埋め合わせる考え方です。
例えば、企業が自社で削減しきれない排出に対して、森林管理や再生可能エネルギー事業から創出されたカーボンクレジットを購入する方法があります。

自社の省エネはオフセットではない

照明をLEDへ交換したり、製造設備を高効率化したりすることは、自社の排出量を直接減らす取り組みです。
一方、別の場所で生み出された削減量や吸収量を利用して、残った排出を埋め合わせることがカーボンオフセットです。
したがって、取り組みの優先順位は次のようになります。

  1. 排出量を把握する
  2. 自社で可能な削減を行う
  3. 削減しきれない排出を吸収・除去やクレジットで補う

カーボンクレジットだけを購入し、自社の排出削減を進めない方法は、カーボンニュートラルの本来の考え方とは異なります。

カーボンニュートラルを実現する取り組み

企業や社会が取り組める方法は、大きく「排出を減らす」「吸収・除去を増やす」の二つに分けられます。

省エネルギーを進める

使用するエネルギーそのものを減らす取り組みです。

  • 高効率な製造設備への更新
  • LED照明への切り替え
  • 空調設備の効率化
  • 工場の排熱利用
  • 建物の断熱性向上
  • 生産工程の見直し
  • 輸送ルートの効率化

省エネルギーは、温室効果ガス排出量だけでなく、電気代や燃料費の削減にもつながる場合があります。

再生可能エネルギーへ切り替える

太陽光、風力、水力、地熱など、発電時の温室効果ガス排出が比較的少ないエネルギーを利用します。
自社施設へ太陽光発電設備を設置する方法のほか、再生可能エネルギー由来の電力を購入する方法もあります。

燃料や輸送方法を見直す

ガソリンや軽油の使用量を減らすために、

  • 電気自動車の導入
  • 配送ルートの最適化
  • 積載率の向上
  • 共同配送
  • 鉄道や船舶へのモーダルシフト

などを検討します。
ただし、電気自動車も、使用する電力の発電方法まで含めて評価することが重要です。

材料の使用量や種類を見直す

製品分野では、材料選定も重要な取り組みです。

  • 製品を軽量化する
  • 長く使用できる設計にする
  • 再生材を使用する
  • 単一素材化してリサイクルしやすくする
  • バイオマス由来原料を使用する
  • 製造ロスを削減する

ただし、材料を変更すれば必ず製品全体の排出量が減るとは限りません。
材料の製造、輸送、加工、使用、廃棄までを含めて比較する必要があります。

森林による吸収を維持・増加させる

森林は、樹木の成長を通じて大気中のCO2を吸収します。
植林だけでなく、間伐などの適切な森林管理を行い、森林の吸収機能を維持することが重要です。
一方で、森林火災、伐採、樹木の枯死などによって、吸収した炭素が再び放出される可能性があります。
そのため、森林吸収には継続的な管理が必要です。

CO2を回収・除去する

工場などから排出されるCO2を回収して地下へ貯留するCCSや、回収したCO2を原料として利用するCCUなどの技術開発も進められています。
また、大気中からCO2を直接回収する技術もあります。
ただし、現時点ではコストやエネルギー消費、貯留場所などの課題があり、排出削減の代わりではなく、削減しきれない部分を補う技術として考える必要があります。

日本のカーボンニュートラル目標

日本は、2050年カーボンニュートラルの実現を掲げています。
さらに、2025年2月に国連へ提出した新たなNDCでは、温室効果ガスを2013年度比で、2035年度に60%、2040年度に73%削減する目標を示しました。
NDCとは、パリ協定に基づいて各国が定める温室効果ガス削減目標です。
日本の主な目標は次のとおりです。

  • 2030年度:2013年度比46%削減
  • 2035年度:2013年度比60%削減
  • 2040年度:2013年度比73%削減
  • 2050年:カーボンニュートラル

これらは国だけが取り組む目標ではありません。
企業、自治体、消費者を含む社会全体で、エネルギー、製造、物流、建築、材料などを見直す必要があります。
EUも、1990年比で2030年までに温室効果ガスの純排出量を少なくとも55%削減し、2050年の気候中立を目指しています。

企業が取り組むべきこと

企業がカーボンニュートラルへ対応する際、最初から大規模な設備投資を行う必要はありません。
まずは、自社のどこで温室効果ガスが発生しているかを把握します。

排出量を把握する

企業の温室効果ガス排出量は、GHGプロトコルに基づき、一般にScope1、Scope2、Scope3に分類されます。

  • Scope1:自社が燃料の使用などで直接排出するもの
  • Scope2:購入した電気や熱の使用に伴う間接排出
  • Scope3:原材料調達、輸送、製品使用、廃棄など、その他の間接排出

製造業では、原材料に関係するScope3が大きな割合を占めることがあります。
そのため、自社工場の省エネだけでなく、使用する材料の見直しも重要になります。

削減の優先順位を決める

排出量を算定した後、排出量が大きく、改善しやすい項目から取り組みます。
例えば、

  • 電力使用量
  • 燃料使用量
  • 原材料
  • 物流
  • 廃棄物
  • 製品使用時のエネルギー

などです。
数字を把握せず、イメージだけで対策を選ぶと、費用をかけても削減効果が小さい可能性があります。

バイオマスプラスチックとの関係

バイオマスプラスチックとは、植物などの再生可能な生物由来資源を原料の一部または全部に利用したプラスチックです。
植物は成長する過程で大気中のCO2を取り込みます。
そのため、バイオマス由来の炭素を製品へ利用することは、化石資源由来の炭素への依存を減らす選択肢になります。

炭素の量ではなく由来が重要

他の記事ではこれまで、バイオマス原料は石油由来原料より炭素量が少ないため、燃焼時のCO2が少ないと説明していました。
しかし、燃焼時に発生するCO2量は、材料に含まれる炭素量や組成によって異なります。
バイオマス原料の重要な点は、単純な炭素量ではなく、その炭素が近年の植物成長によって大気中から取り込まれたものか、地下の化石資源から新たに取り出されたものかという由来の違いです。

バイオマスだから自動的にカーボンニュートラルではない

バイオマスプラスチックの製造には、

  • 農作物の栽培
  • 原料の収穫・回収
  • 乾燥や加工
  • 輸送
  • コンパウンド
  • 成形
  • 廃棄

などでエネルギーが使われます。
また、原料によっては土地利用、水、肥料などの影響も考える必要があります。
そのため、バイオマスプラスチックを採用するだけで、製品全体が自動的にカーボンニュートラルになるわけではありません。
実際の環境効果は、LCAやCFPを使い、製品のライフサイクル全体で評価します。

バイオマス度だけで判断しない

バイオマス度が高くなるほど、一般には石油由来原料の使用割合を減らせます。
一方で、配合量を増やすことによって、

  • 強度
  • 流動性
  • 耐熱性
  • 外観
  • 吸湿性
  • 成形性
  • 製品寿命

が変化する可能性があります。
製品寿命が短くなり、交換回数が増えれば、環境負荷が逆に大きくなる場合もあります。
必要な製品性能を維持しながら、適切なバイオマス度を設計することが重要です。

再生可能炭素との関係

カーボンニュートラルを材料面から進める考え方として、再生可能炭素があります。
再生可能炭素とは、化学品やプラスチックに使用する炭素を、化石資源由来から次の炭素源へ切り替える考え方です。

  • バイオマス由来炭素
  • リサイクルによって循環する炭素
  • 回収したCO2由来炭素

カーボンニュートラルが温室効果ガスの排出と吸収を均衡させる目標であるのに対し、再生可能炭素は、製品に使用する炭素源そのものを見直す考え方です。
バイオマスプラスチックは、再生可能炭素を利用する方法の一つです。

まとめ

カーボンニュートラルとは、人間活動によって排出される温室効果ガスと、吸収・除去される温室効果ガスを均衡させ、全体として実質ゼロにすることです。
実現するためには、

  • 省エネルギー
  • 再生可能エネルギー
  • 物流の効率化
  • 材料の見直し
  • リサイクル
  • 森林管理
  • CO2の回収・除去
  • カーボンクレジット

などを組み合わせる必要があります。
重要なのは、最初から吸収やオフセットに頼るのではなく、まず排出量を把握し、可能な限り削減することです。
バイオマスプラスチックも、カーボンニュートラルへ貢献する可能性を持つ材料ですが、採用するだけで環境負荷がゼロになるわけではありません。
必要な物性や製品寿命を維持しながら、LCAやCFPの視点で環境効果を確認する必要があります。
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