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Vol. 16 バイオプラスチックとは?メリット・デメリットを徹底解説

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最近よく耳にするバイオプラスチックですが、どういったプラスチックで、どのようなメリット・デメリットがあるのか、みなさんはご存知でしょうか?身近にある製品などを交え、従来のプラスチックとの違いなども解説してみたいと思います。

バイオプラスチックとは?

バイオプラスチックは、従来のプラスチックに代わる新素材です。大きく2種類に分類可能で、再生可能な資源から作られている「バイオマスプラスチック」、自然環境下で分解可能な性能を持つ「生分解性プラスチック」の総称です。「再生可能」「分解可能」といったキーワードからも想像できる通り、地球環境にやさしいといった特長を持っています。

身近にあるバイオプラスチックで作られた製品

実はみなさんの身の回りには、数多くのバイオプラスチックで作られた製品があります。

  • レジ袋
  • ストロー
  • カトラリー
  • アメニティ
  • 包装資材

いくつか例を挙げましたが、最も身近な例を挙げると、コンビニやスーパーで売られているレジ袋ではないでしょうか?

一昔前、スーパーやコンビニでの買い物の際、レジ袋は当たり前のように無料で配布されていましたが、2020年7月1日より、有料化となりました。

また、ファミリーレストランなどでドリンクを注文した際、従来は自由にストローを使うことができましたが、一部の店舗では、店員の方に声をかけなければ入手することができません。

同様に、ホテルなどの宿泊施設でも、以前は部屋にアメニティセットが置かれていましたが、現在ではフロントの横に、アメニティと共に「必要な方は必要な数量だけお持ちください」といった表示が設置されているのを目にします。

このように、実はみなさんの身の回りでも、バイオプラスチック製品が使われ始めています。

これらの取り組みは、プラスチック資源循環促進法によるものです。

従来のプラスチックについて

さて、ここまでの解説で、バイオプラスチックは地球環境にやさしく、徐々に身近で使われ始めていることが分かりましたが、ここでは、従来のプラスチックとの違いを解説したいと思います。

従来のプラスチックは、化石燃料である石油から得られる、ナフサを原料に作られています。詳細は割愛しますが、石油からナフサとなり、身近にある製品の原料となる、プラスチック樹脂が作られています。このプラスチック樹脂を、様々な形に成形することで、最終的な製品の形となります。

プラスチック製品は、先ほど例として挙げた、バイオプラスチック製品とは比較にならないほど、様々な産業や分野で活用されています。自動車、住宅、家電など、挙げるとキリがないほどに、非常に多岐にわたって活用されていますが、燃焼時にCO2が発生します。

例えば、歯ブラシは毛先が傷んでくると新しいものに交換しますが、捨てられた歯ブラシは燃えるゴミとして処理され、燃焼される時にCO2が発生します。CO2は温室効果ガスの一種で、地球温暖化の原因とされています。非常に多岐にわたって活用されているからこそ、従来のプラスチックは、環境負荷が高いと言われています。

一方、バイオプラスチックは、先ほど解説した「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック」で、それぞれ異なる性質を持っていますが、両者ともに、CO2発生量を削減し、地球環境にやさしいプラスチックです。

バイオプラスチックについて

まず、「バイオマスプラスチック」について解説します。バイオマスプラスチックは、再生可能な資源から作られています。平たく言えば一部例外もありますが、植物由来と言うこともできます。

例えば、サトウキビからエタノールを抽出し、バイオマスプラスチックの原料とする方法や、トウモロコシから抽出したデンプンを原料とする方法などが挙げられます。

後述しますが、2024年現在は、様々な理由によって、従来のプラスチックに、バイオマスプラスチックをミックスして、成形品を作る方法が多く用いられています。

次に「生分解性プラスチック」について解説します。生分解性プラスチックは、使用後の適切な処理によって、バクテリアによる分解が可能な素材です。分解による自然への悪影響はありません。適切な処理とは、例えば土の中や、堆肥化設備(コンポスト)などを指します。

燃焼を伴わない処分が可能ですので、CO2削減に大きく貢献出来る素材です。

生分解性プラスチックは、従来のプラスチックや、バイオマスプラスチックと比較して、価格が高い傾向にありますが、生分解、つまり消えてなくなることがメリットになる用途では、作業の効率化や労力の軽減から、積極採用されているケースもあります。

例えば、農業で用いられる、生分解性マルチシートなどが挙げられます。

メリット

さてここまで、バイオプラスチックについて、従来のプラスチックについて、解説をしましたが、ここからは、バイオプラスチックのメリットについて、具体的に解説したいと思います。

カーボンニュートラルによるCO2発生量の削減

みなさんも、カーボンニュートラルという言葉を、耳にしたことがあるのではないでしょうか?カーボンニュートラルとは、製造やサービスなど、なんらかの活動によって排出されるCO2を、排出量と同じだけ吸収、除去して、簡単に言えば「プラマイゼロ」にする考え方です。

例えばバイオプラスチックは、製造時と燃焼時にCO2を排出しますが、その原料である再生可能な資源、つまり植物などが生育する段階で、光合成によってCO2を吸収するので、カーボンニュートラルの考え方を当てはめることができます。

化石燃料使用量の低減

従来のプラスチックの原料である石油は、いわゆる化石燃料で、有限の資源とされています。掘削技術などの進化によって、掘削可能な量は増えているとの見方もありますが、有限資源には変わりありません。

その点、バイオプラスチックは、100%石油依存ではないので、少しでも化石燃料使用量の低減に貢献可能です。

生分解による作業効率化と労力の軽減

前項でも解説しましたが、生分解性プラスチックは、燃焼を伴わない処分が可能で、例えば土の中や、コンポストで分解させることができます。燃焼を伴わないので、CO2はもちろん排出しません。

さらに、生分解性プラスチックは、分解する性能を発揮できる用途では、作業効率化や労力の軽減といったメリットがあります。

先ほども述べた農業用マルチシートをはじめ、農業、林業、園芸分野などでは、例えば育苗ポット、養生用不織布など、様々な活用が期待できます。

アップサイクルによる資源の有効活用

アップサイクルとは、本来廃棄されるものを、違う形で新しい価値を持たせることです。身近なところでは、古タイヤがファッションバッグになっている例が挙げられます。

バイオマスプラスチックでは、その原料として、卵の殻や貝殻が用いられることがあります。卵の殻は食品関係の工場などで、大量に発生しますし、貝殻は水産加工の工程で大量に発生します。漁港などで、貝殻が大量に積み上げられている映像を見たことがある方もいるかもしれません。

バイオマスプラスチックはこのように、アップサイクルとしての側面もあるのです。

具体的なCSRの実践

CSRは、Corporate Social Responsibilityの略で、企業の社会的責任、つまり、企業としての活動を行うことにあたって、担うこととなる責任のことです。ひとことでCSRといっても、社会に対して、従業員に対して、地域に対してなど、その対象は多岐にわたります。

バイオマスプラスチックは、自社製品に採用すること自体が、CO2排出量の削減につながりますので、環境に対してのCSRを果たすことができます。

デメリット

バイオプラスチックのメリットをお読みになった方は「良いことづくし」と思われるかもしれませんが、もちろんデメリットもあります。

従来のプラスチックと比較してコストが高い

バイオプラスチックは、従来のプラスチックと比較して、コストが高いことが挙げられます。コストが高い背景ですが、バイオプラスチックだから高い、ということではなく、需要と供給のバランスや、製造技術などが挙げられます。

例えば需要と供給のバランスですが、従来のプラスチックから、バイオプラスチックへの置き換えが、ようやく進みつつある2024年現在、まだまだ従来のプラスチック需要の方が高いです。将来的にバイオプラスチックの需要が高まれば、あらゆる面でコストの圧縮が可能になると考えられます。

また、製造技術についても同様に、従来のプラスチックは1900年代初頭から製造されており、効率的な製造技術が確立されていると言えます。それに対して、バイオプラスチックは、まだまだ効率化の余地があると言えます。製造の効率化が高まれば、当然ながらコストの圧縮も可能となります。

従来のプラスチックとは異なる特性

バイオプラスチックも、従来のプラスチックも「プラスチック」という言葉で一括りにされていますが、実際にはそれぞれ異なる特性を持っています。例えば強度や耐久性が求められる用途の場合、バイオプラスチックは、従来のプラスチックに劣る場合があります。一部のバイオプラスチックでは、耐久性の向上が図られているものもあります。

従来のプラスチックと成形条件が異なる場合がある

一般的なバイオプラスチックは、既存の成形設備で成形可能ですが、成形時の温度設定や速度など、従来のプラスチックと異なる場合があります。もちろん調整を行うことで、最良な成形結果が得られるので、バイオプラスチックの使い始めに、少々手間がかかるという意味で、デメリットとして記載しました。

バイオプラスチックの今後

2030年までのバイオプラスチックを導入目標は200万トン

環境省が2021年に発表した、バイオプラスチック導入ロードマップでは、2030年時点でのバイオマスプラスチック導入量を、200万トンと定めています。様々な発表値がありますが、2021年時点での導入料は10万トンにも到達していないので、ハードルの高い目標と言えます。

一方で、レジ袋の有料化や、お弁当などを買った際に無償で配布されている、カトラリー有料化の話も出始めているので、今後の需要の高まりによっては、実現不可能な数字ではないとも考えられます。

様々な産業や分野への広がり

レジ袋やアメニティなど、どちらかと言えば、使い捨ての用途で導入が増えつつありますが、工業、産業、農業など、あらゆる分野で導入が検討されているという話も聞きます。

徐々に導入しやすいコストに

環境省のロードマップと共に、あらゆる分野での導入が進めば、需要と供給のバランスからコストが下がり、さらに導入が加速する可能性もあります。適切な分野で適切に、従来のプラスチックとバイオプラスチックを使い分け、バランスを取りながら、地球環境を守りつつ、豊かな暮らしが送れる未来を願っています。

VASUジャパンのご紹介

VASUジャパンでは、射出成形をはじめ、様々な成形方法に対応した、バイオマスプラスチック、生分解性プラスチック、双方のバイオプラスチックをラインナップしています。従来のプラスチックからの置き換えでのお困りごと、SDGsの取り組みとして、初めの一歩に関してのご相談など、お気軽にお問い合わせください。