この記事は2025年12月15日にメールマガジンVol. 33として配信されたものです。
初回投稿日: 2026年3月16日
最終更新日: 2026年8月4日
海洋プラスチック問題は、世界各地の海や河川で深刻化している環境問題です。
海岸へ漂着したペットボトルや袋だけでなく、海中に残された漁具や、目に見えないほど細かくなったマイクロプラスチックも問題となっています。
一度海へ流出したプラスチックは、広い範囲へ拡散するため、完全に回収することが困難です。
国連環境計画(UNEP)によると、毎年約1,900万~2,300万トンのプラスチックごみが、湖、河川、海などの水域へ流出していると推計されています。
この記事では、海洋プラスチックごみが発生する原因、日本と世界の現状、生態系や社会への影響、企業や私たちができる対策について解説します。
海洋プラスチック問題については、こちらの記事もご覧ください。
海洋プラスチック問題とは?マイクロプラスチックとの関係や私たちにできること
コンテンツ
海洋プラスチック問題とは

海洋プラスチック問題とは、適切に回収・処理されなかったプラスチック製品や破片が、河川や海へ流出し、長期間にわたって海洋環境へ残る問題です。
プラスチックは、軽く、丈夫で、水に強いという優れた特徴を持っています。
一方で、自然環境中では分解されにくく、一度流出すると長期間残り続けます。
環境省によると、1950年代以降に海へ流出したプラスチックごみの累積量は、約1億3,900万トンと推計されています。
「2050年には魚より多くなる」とは
世界経済フォーラムなどが2016年に公表した報告では、現在の状況が続いた場合、2050年には海洋中のプラスチックの重量が魚の重量を上回る可能性があると予測されました。
これは海に存在するプラスチックと魚を実際にすべて計測した結果ではなく、プラスチックの生産・使用・流出が現在の傾向で続くことを前提とした将来予測です。
ただし、海洋プラスチック問題の規模と、対策を急ぐ必要性を示す象徴的な数字として広く引用されています。
海洋プラスチックについては、環境省のページで詳しく解説されています。
海洋プラスチックごみはどこから来る?

海洋プラスチックというと、海岸や船から直接捨てられたごみを想像しがちです。
しかし、海へ流出するプラスチックの多くは、私たちが暮らす陸地から河川や水路を通じて流れ込んだものです。
街や河川からの流出
街中でポイ捨てされた容器包装や、屋外に放置されたプラスチック製品は、雨や風によって側溝へ流れ込みます。
その後、水路や河川を通じて海まで運ばれる場合があります。
海岸から離れた地域で発生したごみも、最終的に海洋ごみとなる可能性があります。
不適切な廃棄物管理
ごみの収集や処理体制が十分に整っていない地域では、廃棄物が屋外に放置されたり、河川へ流れ込んだりすることがあります。
台風、洪水、津波などの災害によって、保管中の廃棄物や生活用品が海へ流出する場合もあります。
漁具や釣り具
漁網、ロープ、ブイ、釣り糸などの漁業・レジャー用品も海洋プラスチックごみの一部です。
流失した漁網や釣り糸は、海中に残り続け、魚、海鳥、ウミガメなどが絡まる原因になります。
タイヤや人工芝などの摩耗
海洋プラスチックは、容器包装のような目に見えるごみだけではありません。
自動車タイヤの摩耗粉、人工芝の破片、合成繊維の衣類から発生する繊維など、日常生活で使用する製品から微細なプラスチックが発生する場合があります。
これらが雨水や排水を通じて河川へ流出することがあります。
マイクロビーズ
過去には、洗顔料や化粧品などへ研磨剤として小さなプラスチック粒子が配合されていました。
こうした意図的に製造された微細な粒子をマイクロビーズと呼びます。
使用後に排水へ流れ、処理施設で完全に回収されず、河川や海へ到達する可能性があるため、各国や企業によって使用削減が進められています。
マイクロプラスチックとは
マイクロプラスチックとは、一般に大きさが5ミリメートル以下のプラスチック片を指します。
発生方法によって、大きく二つに分けられます。
一次マイクロプラスチック
製造された時点から小さいプラスチックです。
化粧品などに使用されていたマイクロビーズや、工業用の樹脂ペレットなどが該当します。
二次マイクロプラスチック
ペットボトル、袋、容器、漁具などの大きなプラスチック製品が、紫外線、波、摩擦などによって細かくなったものです。
プラスチックは細かく砕けても、短期間で完全に消えるわけではありません。
細かくなるほど広い範囲へ拡散し、回収も難しくなります。
海洋生物への影響

海洋プラスチックごみは、景観を損なうだけでなく、海洋生物や生態系にも影響を与えます。
UNEPは、海洋ごみとプラスチック汚染が、生物、海洋生態系、人間の健康、社会経済へ影響を及ぼす世界的な問題であると評価しています。
誤食
魚、海鳥、ウミガメなどが、プラスチック片を餌と間違えて飲み込むことがあります。
胃や消化管にプラスチックがたまると、
- 本来の餌を食べられない
- 消化器官が傷つく
- 栄養不足になる
- 窒息する
といった影響が生じる可能性があります。
漁網や釣り糸への絡まり
海中に残された漁網や釣り糸に、海洋生物が絡まる場合があります。
流失後も生物を捕らえ続ける漁具は「ゴーストギア」と呼ばれることがあります。
泳ぐことや餌を取ることができなくなり、傷や死亡につながる可能性があります。
生息環境への影響
プラスチックごみが海底やサンゴ礁などへ堆積すると、生物の生息場所を覆ったり、環境を変化させたりする可能性があります。
また、浮遊するプラスチックに付着した生物が遠くまで移動し、本来生息していなかった地域へ運ばれることも懸念されています。
人間への影響は分かっている?
マイクロプラスチックは、海水、魚介類、飲料水など、さまざまな場所から検出されています。
そのため、食物や水を通じて人が微細なプラスチックを摂取する可能性があります。
一方で、通常の生活で摂取する量が人体へどの程度の影響を与えるのかについては、まだ研究途上です。
現時点では、人の健康被害を断定するのではなく、
- 体内へどの程度取り込まれるのか
- どの程度排出されるのか
- 粒子の大きさによって影響が異なるのか
- 添加剤や付着物質が影響するのか
などを慎重に調べる必要があります。
不確かな部分があるから対策が不要なのではなく、環境中へ流出し続ける前に予防することが重要です。
海洋プラスチックごみは、自然環境だけでなく、産業や地域社会にも影響します。
環境省は、海洋プラスチックごみによる影響として、海洋環境の悪化、海岸機能の低下、景観への悪影響、船舶航行の障害、漁業や観光への影響を挙げています。
漁業への影響
漁網や漁船のスクリューへごみが絡まると、作業の中断や設備の故障につながります。
漁場や水産物のイメージが悪化することで、販売や観光へ影響する可能性もあります。
海岸の清掃費用
漂着ごみが多い海岸では、自治体、漁業関係者、地域住民などが清掃を行います。
回収だけでなく、分別、運搬、処理にも費用と人手が必要です。
観光への影響
ごみが多く漂着した海岸は、景観や衛生面の印象が悪化します。
海水浴、マリンスポーツ、宿泊など、海を利用する観光業に影響する可能性があります。
日本の海洋プラスチック問題
日本は、ごみの定期収集や焼却処理などの仕組みが整備されています。
しかし、国内で発生したプラスチックが、ポイ捨て、災害、河川、漁業活動などを通じて海へ流出する可能性はあります。
また、日本の海岸には、国内で発生したごみだけでなく、海流や季節風によって海外から運ばれたごみも漂着します。
日本だけで解決できない問題
海は国境で区切ることができません。
ある国で流出したごみが、海流によって別の国へ漂着することがあります。
そのため、国内の分別や回収だけでなく、周辺国を含む国際的な協力が必要です。
発生量の推計には幅がある
海洋へ流出するごみの量は、海へ到達する前にすべて計測できるわけではありません。
河川の流量、季節、降雨、災害などによっても変化するため、推計値には幅があります。
記事へ数字を掲載する場合は、「年間○トンが確実に流出している」と断定せず、調査方法や推計年を確認することが大切です。
世界の海洋プラスチック問題

UNEPは、毎年約1,900万~2,300万トンのプラスチックごみが、水域の生態系へ流出していると推計しています。
これは海だけではなく、湖や河川へ流出するものも含む数字です。
また、対策が十分に進まない場合、プラスチックごみの発生量や環境中への流出量が今後さらに増加すると予測されています。
生産量の増加だけが原因ではない
プラスチックの使用量が増えることは、流出リスクを高める要因の一つです。
しかし、問題の大きさは、生産量だけで決まるわけではありません。
- 回収制度
- 分別
- 廃棄物処理施設
- 再利用・リサイクル
- 不法投棄対策
- 消費者教育
- 洪水や災害への備え
など、使用後の管理体制が大きく影響します。
海洋プラスチック問題を減らす方法
海へ流出したプラスチックを回収することも重要ですが、回収できる量には限界があります。
特にマイクロプラスチックとなった後の回収は非常に困難です。
そのため、海へ流出する前に発生と流出を防ぐことが基本となります。
不要な使い捨て製品を減らす
必要のない袋、容器、カトラリーなどを使用しないことで、廃棄物の発生量を減らせます。
ただし、プラスチック包装には食品の保存や衛生確保の役割もあります。
すべてを一律に廃止するのではなく、不要なものから減らすことが重要です。
正しく分別・回収する
プラスチック製品を屋外へ放置せず、自治体のルールに従って処分します。
分別されたものがすべて再生されるとは限りませんが、管理された処理ルートへ乗せることが、環境流出の防止につながります。
製品を長く使う
繰り返し使用できる容器や耐久性のある製品を選び、製品寿命を延ばすことも重要です。
ただし、繰り返し製品も、洗浄や輸送を含む環境負荷を考える必要があります。
企業が流出しにくい製品を設計する
企業側では、
- 部品が脱落しにくい設計
- 単一素材化
- 回収しやすい構造
- 再生材の利用
- 包装材の削減
- 樹脂ペレットの流出防止
- 漁具の管理・回収
などに取り組めます。
製品を販売する段階だけでなく、使用後まで想定した設計が求められます。
拡大生産者責任については、こちらの記事もご覧ください。
拡大生産者責任(EPR)とは?製品の「作った後」まで考える時代へ
生分解性プラスチックは解決策になる?

生分解性プラスチックは、一定の環境条件で微生物によって分解される性質を持つ材料です。
海洋プラスチック対策として期待されていますが、すべての生分解性プラスチックが海で速やかに分解するわけではありません。
分解する環境は材料によって異なる
生分解性プラスチックには、
- 産業用コンポストで分解するもの
- 家庭用コンポストで分解するもの
- 土壌で分解するもの
- 海洋環境での分解を想定したもの
があります。
産業用コンポストで分解できる材料であっても、低温で微生物が少ない海中では、同じ速度で分解するとは限りません。
海洋用途では、海洋生分解性について確認された材料を選ぶ必要があります。
日本でも、海洋環境で分解する材料の開発と導入を進めるロードマップが策定されています。
ポイ捨てを認める材料ではない
海洋生分解性を持つ材料であっても、海へ捨ててよいわけではありません。
生分解には一定の時間がかかり、分解するまでの間に生物が誤食したり、絡まったりする可能性があります。
生分解性は、適切な回収が難しい用途で、流出時の長期残留リスクを抑えるための補助的な機能と考えるべきです。
適した用途を選ぶ
海洋生分解性プラスチックの検討対象としては、
- 漁具や釣り具の一部
- 海洋・水辺で使用する資材
- 回収が困難な用途
- 紛失や流出リスクが高い部品
などが考えられます。
一方で、回収可能な容器や日用品まで、すべて生分解性へ置き換えることが最適とは限りません。
再利用やリサイクルが可能なものは、資源循環を優先する方が適している場合があります。
バイオプラスチックについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
バイオプラスチックとは?種類・特徴・メリット・課題を分かりやすく解説【2026年版】
私たちにできること
海洋プラスチック問題は規模が大きいため、個人の行動だけでは解決できません。
一方で、流出の多くは日常生活や事業活動とつながっています。
私たちにできる主な行動は次のとおりです。
- ポイ捨てをしない
- 屋外のごみを放置しない
- 自治体のルールに従って分別する
- 不要な使い捨て製品を減らす
- 製品を長く使う
- 地域の清掃活動へ参加する
- 環境配慮の根拠が明確な商品を選ぶ
- 海や川で使用した道具を持ち帰る
「環境に良さそう」という印象だけでなく、製品がどのように回収・処理されるのかまで確認することが大切です。
まとめ
海洋プラスチック問題は、適切に管理されなかったプラスチックが河川や海へ流出し、長期間にわたって環境へ残る問題です。
毎年約1,900万~2,300万トンのプラスチックごみが、世界の湖、河川、海などへ流出していると推計されています。
流出したプラスチックは、
- 海洋生物の誤食
- 漁具への絡まり
- 生息環境の悪化
- 漁業や観光への影響
- 海岸清掃費用の増加
など、さまざまな問題を引き起こします。
対策では、海へ流出した後に回収するだけでなく、
- ごみの発生を減らす
- 正しく回収する
- 製品を長く使う
- リサイクルしやすく設計する
- 事業活動からの流出を防ぐ
といった、発生源での予防が重要です。
生分解性プラスチックも選択肢の一つですが、すべての環境ですぐに分解するわけではありません。
用途と分解環境を確認し、再利用、リサイクル、バイオマス化、生分解性などを適切に使い分ける必要があります。
VASUジャパンでは、用途や使用環境に応じた生分解性プラスチックコンパウンドをご提案しています。
強度、流動性、成形方法、分解環境などを確認しながら、材料設計からコンパウンド、ペレット製造まで対応しています。
コンパウンドのOEMについては、こちらのページもぜひご覧ください。
強度・流動性・外観まで設計するコンパウンドOEM
小ロット25kgから試作用サンプルをご提供していますので、農業、土木、水辺など、回収が難しい用途での材料開発をご検討の際はお問い合わせください。
漁業・観光・地域社会への影響