この記事は2026年4月15日にメールマガジンVol. 37として配信されたものです。
スーパーで購入するお弁当や総菜の容器、卵パック、お菓子のトレー。
実はこれらの多くは真空成形という加工方法で製造されています。
真空成形は大量生産に優れた成形方法ですが、その一方で使用される容器の多くは使い捨てであり、環境負荷が課題となっています。
そこで近年注目されているのが真空成形用バイオマスプラスチックです。
本記事では、真空成形の仕組みから、バイオマスプラスチックが注目される理由まで、わかりやすく解説します。
コンテンツ
真空成形とは?
真空成形(Vacuum Forming)は、プラスチックシートを加熱し、柔らかくなった状態で金型に密着させて成形する加工方法です。
- プラスチックシートを枠に固定する
- シートを加熱して柔らかくする
- 加熱したシートを型に合わせる
- シートと型の間の空気を吸引し、型に密着させる
- 冷却後に型から外し、不要な部分を切り取る
このように非常にシンプルなプロセスであり、製品を複数並べて一度に成形する「共取り」ができるため、食品トレーなどの量産にも適しています。一方で、製品の大きさや形状、必要数量によっては、射出成形など他の方法が適する場合もあります。また、射出成形と比較して型の構造がシンプルで、初期費用や製作期間を抑えやすいため、食品から化粧品、産業部品まで幅広い業界で使われています。

真空成形のメリット
真空成形には、次のようなメリットがあります。
型の製作費を抑えやすい
射出成形用の金型と比較して型の構造がシンプルなため、初期費用や製作期間を抑えやすい点が特長です。試作、小ロット生産、製品開発途中の形状確認などにも利用できます。
薄手の製品や大型部品に対応しやすい
食品トレーや包装材のような薄手の製品だけでなく、機器カバーや自動車内装部品など、比較的大きな製品にも対応できます。
共取りによる量産が可能
一枚のシートから複数の製品を同時に成形する「共取り」により、生産効率を高められます。食品トレーや工業部品用トレーなど、同じ形状を繰り返し生産する用途に適しています。
真空成形のデメリットと注意点
肉厚が均一になりにくい
真空成形では、加熱したシートを引き伸ばして形をつくります。そのため、深い部分や角部が薄くなり、製品内で厚みに差が生じることがあります。
必要な強度を確保するには、元のシート厚、製品形状、型の勾配、加熱条件などを考慮する必要があります。
微細な形状の再現には限界がある
真空吸引だけでシートを型に密着させるため、射出成形や圧空成形と比較すると、細かな凹凸や鋭いエッジを再現しにくい場合があります。
複雑な形状や高い寸法精度が必要な製品では、圧空成形や射出成形なども含めて検討することが重要です。
トリミング工程と端材が発生する
成形後には、製品の周囲にある不要部分を切り取るトリミング工程が必要です。端材を再利用できる場合もありますが、材料の種類、汚れや異物の有無、品質条件、回収体制などによって可否が異なります。
真空成形で作られている製品
実は、私たちの日常生活には、真空成形でつくられた製品が数多くあります。代表的な製品は、以下のような“薄い容器”です。
- お弁当
- 総菜のトレー
- お菓子の仕切りトレー
- 化粧品の内装トレー
- 卵のパック
- 工業部品輸送用トレー
- 医療用トレー(滅菌パックの保持部材など)
パッケージの軽量化が進む現代では、真空成形容器はなくてはならない存在です。つまり、「真空成形 = 大量に消費される容器」であり、使用量の多い容器包装分野で材料を見直すことは、石油由来原料への依存や温室効果ガス排出量を削減するための選択肢になります。ただし、削減効果はバイオマス度、製品重量、製造工程、輸送、廃棄方法などによって異なります。
ご参考までに、パッケージの軽量化は様々な経済的メリットをもたらします。軽量にすることでプラスチックシートの使用量が減りますので、原材料コスト削減につながります。また輸送時も軽い方がそれだけ効率よく運搬することができますので、輸送コストの削減にもつながります。
バイオマスプラスチックとは?
バイオマスプラスチックとは、次のような再生可能な資源(バイオマス)を原料に含むプラスチックの総称です。以下は再生可能な資源の例です。
- コーンスターチなどのデンプン
- 米(破砕米、規格外米など)
- ジャガイモ・タピオカなどの澱粉作物
- 木粉
- 牡蠣殻・卵殻などの無機バイオ素材
植物由来のバイオマス原料については、植物が成長過程でCO2を吸収することから、燃焼時に排出されるバイオマス由来のCO2を大気中のCO2増加として数えないカーボンニュートラルという考え方があります。ただし、原料の生産、製品の製造・輸送、石油由来成分などに伴う環境負荷は別途考慮する必要があります。
つまり、石油完全ゼロではなくても、“石油依存を下げ、CO2排出量を削減する素材” として世界的に導入が進んでいます。また、完全にバイオ由来のものから、「一部をバイオに置き換えたもの(バイオマス度20〜70%)」など幅広いバリエーションが存在します。
バイオマスプラスチックについては、当メールマガジンのアーカイブで詳しく解説していますので、併せてそちらもご覧ください。
ちなみにバイオマスプラスチックと生分解性プラスチックは、同じ意味ではありません。
バイオマスプラスチックは、植物などの再生可能な有機資源を原料の一部または全部に使用したプラスチックです。一方、生分解性プラスチックは、一定の環境条件のもとで微生物の働きによって分解される性質を持つプラスチックを指します。
そのため、バイオマス由来の原料を使用していても、生分解するとは限りません。使用後は、製品の材質や地域・事業者の分別ルールに従って適切に処理する必要があります。

真空成形に使われる材料と選び方
| 材料 | 主な特長 | 用途例 |
|---|---|---|
| PS・HIPS | 成形しやすく、トレー用途で使われる | 食品・工業部品用トレー、包装材 |
| PP | 耐薬品性や耐熱性を持つ | 食品容器、医療・工業用途 |
| PET・A-PET | 透明性を確保しやすい | 透明容器、食品パッケージ |
| ABS | 耐衝撃性と外観のバランスがよい | 機器カバー、内装部品 |
| PC | 透明性、耐衝撃性、耐熱性を持つ | 保護カバー、産業機器部品 |
材料は成形性だけでなく、耐熱性、強度、透明性、食品との接触、印刷・接着の必要性、使用後の回収・処理方法などを踏まえて選定します。食品に直接触れる容器では、食品接触材料に関する法令や規格への適合確認も必要です。
真空成形用バイオマスプラスチックが注目される理由
真空成形では伝統的に、以下のような石油由来プラスチックが使われてきました。
- PP(ポリプロピレン)
- PET(ポリエチレンテレフタレート)
- PS(ポリスチレン)
これらは加工性がよく、非常に安価です。しかし同時に以下のデメリットが挙げられます。
- 石油に依存している
- 焼却時のCO2排出が避けられない
- 使い捨て用途が多い
これらの課題を解決するために登場したのが、真空成形が可能なバイオマスプラスチックのシートです。最近では、食品トレーやお菓子パッケージの一部で、すでにバイオマスシートが使われ始めています。特に、以下のような用途に最適です。
- 軽量で大量生産向き
- 消費量が非常に大きい
- 用途的にリサイクルが難しいものが多い
リサイクルだけでは解決できない容器包装の課題
日本では、PETボトル・アルミ缶・ガラス瓶などのように、確立されたリサイクルがある一方で、食品トレーや薄い仕切り容器などは、次の理由からリサイクルが難しいケースが多いのが実情です。
- 食品残渣が付着しやすい
- 多層構造で選別が困難
- 薄く軽量で効率が悪い
- 種類が多く分別が複雑
このような「どうしてもリサイクル前提にしづらい容器」こそ、バイオマス化によるCO2削減の恩恵が大きい分野です。
バイオマス原料を使うことで、
- 石油使用量の削減
- 石油由来原料の使用量削減
- 製品のライフサイクル全体での温室効果ガス排出量削減の可能性
- 再生可能資源の利用拡大
- 企業の環境配慮型パッケージへの転換
これらのことを実現することができます。
重要なのは、「すべてをリサイクルへ」「すべてをバイオマスへ」と一律に考えるのではなく、用途に応じて適切な方法を選ぶことです。「再利用・リサイクルで循環できる容器はリサイクルへ」、「リサイクルが難しい使い捨て用途はバイオマスへ」。
このバランスこそが、企業の環境戦略として現実的であり、かつカーボンニュートラル社会に向けた現実的な選択肢の一つといえます。

まとめ:真空成形用シートは用途と成形条件に合わせて選ぶ
真空成形は、食品トレー、包装材、工業部品用トレー、機器カバーなど、身近な製品に幅広く利用されています。
型の製作費を抑えやすく、薄手の製品や大型部品にも対応しやすい一方、肉厚のばらつき、微細形状の再現、トリミングによる端材などには注意が必要です。
また、バイオマスプラスチックへの切り替えでは、環境面だけでなく、次の項目を確認することが重要です。
- 既存設備での成形性
- 加熱温度や加熱時間
- シートの厚さと製品強度
- 食品接触用途への適合性
- バイオマス度
- 使用後の回収・処理方法
VASUジャパンでは、とうもろこし由来のスターチなどをコンパウンドした真空成形向けバイオマスプラスチックシートをご提案しています。
お菓子用トレー、工業部品用トレー、弁当デリバリーボックス、飲料カップ、フルーツトレー、ボトル贈答用トレー、ノベルティなどへの活用実績があります。
試作用材料は25kgからご提供しています。まず標準材料で成形性や物性をご確認いただき、要求仕様を満たせない場合には、強度、流動性、外観、バイオマス度などを調整するコンパウンドOEMもご相談いただけます。
「既存の設備や型で成形できるか確認したい」「食品トレーをバイオマス化したい」「必要な物性に合わせて材料を調整したい」といった段階から、お気軽にお問い合わせください。