この記事は2025年6月18日にメールマガジンVol. 27として配信されたものです。
初回投稿日: 2025年9月17日
最終更新日: 2026年7月30日
脱炭素や資源循環への関心が高まる中、製品や包装材に使用するプラスチックを見直す企業が増えています。
取引先から環境配慮型材料について質問されたり、社内でバイオプラスチックの導入検討が始まったりした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一方で、バイオプラスチックについて調べると、
- バイオマスプラスチック
- 生分解性プラスチック
- PLA
- PBAT
- バイオマス度
- コンポスト
など、さまざまな言葉が出てきます。
特に混同されやすいのが、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの違いです。
この記事では、バイオプラスチックの基本的な種類、特徴、メリット、課題、用途について、初めて検討する方にも分かりやすく解説します。
バイオプラスチックとは
バイオプラスチックとは、一般に「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック」を含む総称として使われています。
この二つは、同じ環境配慮型材料でも、分類する基準が異なります。
バイオマスプラスチック
バイオマスプラスチックは、植物などの再生可能な生物由来資源を原料として利用したプラスチックです。
「何から作られているか」という原料の由来に着目した分類です。
生分解性プラスチック
生分解性プラスチックは、一定の環境条件下で微生物の働きにより分解され、最終的に水やCO2などへ変化する性質を持ったプラスチックです。
こちらは「使用後にどのように分解されるか」という機能に着目した分類です。
二つは完全に別のものではない
バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックは、WindowsとMacのように完全に分かれた二種類ではありません。
材料によっては、次のような組み合わせがあります。
- バイオマス由来で、生分解性を持つ
- バイオマス由来だが、生分解性を持たない
- 石油由来だが、生分解性を持つ
つまり、バイオマス由来であることと、生分解することは別の性質です。
バイオプラスチックを選ぶ際には、「植物由来の原料を使いたいのか」「使用後に分解する機能が必要なのか」を分けて考える必要があります。
バイオマスプラスチックとは
バイオマスプラスチックは、原料の全部または一部に、再生可能な生物由来資源を使用したプラスチックです。
バイオマスとは、化石資源を除く、再生可能な生物由来の有機性資源を指します。
使用される原料には、次のようなものがあります。
- トウモロコシやジャガイモなどに含まれるデンプン
- サトウキビなどから得られる糖
- 米
- 木粉やセルロース
- 卵殻や貝殻などの未利用資源
原料のすべてがバイオマス由来の材料もありますが、石油由来樹脂にバイオマス原料を一定割合配合した材料も広く利用されています。
バイオマスプラスチックの主なメリット
バイオマスプラスチックには、主に次のメリットがあります。
- 化石資源の使用量を削減できる
- 再生可能な資源を活用できる
- 製品の環境配慮を分かりやすく伝えられる
- 未利用資源の有効活用につながる
- 材料によっては独特の色や風合いを付加できる
化石資源への依存を減らせる
一般的なプラスチックの多くは、石油や天然ガスなどの化石資源から作られています。
これに対して、バイオマスプラスチックでは、原料の全部または一部を植物や未利用資源へ置き換えることができます。
必ずしも石油由来樹脂を完全に使わなくなるわけではありませんが、製品一個当たりの化石資源使用量を抑えられる可能性があります。
カーボンニュートラルの考え方
植物由来の原料に含まれる炭素は、植物が成長する過程で大気中から吸収したCO2に由来します。
そのため、燃焼時にCO2が排出されても、原料の成長から処分までの循環で捉える考え方が、バイオマスにおけるカーボンニュートラルです。
ただし、実際の環境負荷を評価する際には、原料の栽培、加工、輸送、製品製造、廃棄までを含めて考える必要があります。
「バイオマスを使用しているから、必ず製品全体のCO2排出量が少ない」とは限りません。
そのため、より正確に比較する場合は、LCAやCFPによる評価が重要になります。
未利用資源を活用できる
バイオマスプラスチックには、食品加工や農林水産業などから発生する未利用資源を配合する方法もあります。
例えば、
- 牡蠣殻
- 卵殻
- 麦わら
- 米
- 木粉
- セルロース
などです。
これらをプラスチックへ配合することで、廃棄されていた資源を材料として再利用できる可能性があります。
また、配合する素材によっては、表面に粒子や自然な色合いが現れ、一般的な石油由来プラスチックとは異なる外観を作ることもできます。
環境配慮だけでなく、製品の意匠性やブランドストーリーに活用できる点も特徴です。
バイオマスプラスチックの課題
バイオマスプラスチックにはメリットがある一方、導入時にはコストや物性、成形性などを確認する必要があります。
材料価格が高くなりやすい
バイオマス原料の調達や加工には、一般的な石油由来樹脂とは異なる工程が必要です。
また、材料によっては生産量や流通量が少ないため、汎用樹脂より価格が高くなる場合があります。
そのため、単純に材料単価だけを比較すると、導入が難しいケースもあります。
一方で、次のような効果まで含めて評価することが重要です。
- 環境配慮型製品としての付加価値
- ブランドイメージの向上
- 取引先からの環境要求への対応
- 化石資源使用量の削減
- 未利用資源の活用
- 将来の調達方針や規制への備え
材料コストだけでなく、製品全体や事業全体での価値を検討する必要があります。
配合量によって物性が変化する
石油由来樹脂へデンプン、木粉、セルロース、貝殻などを配合すると、元の樹脂とは異なる物性になります。
確認が必要な項目には、次のようなものがあります。
- 引張強度
- 曲げ強度
- 衝撃強度
- 耐熱性
- 流動性
- 成形収縮
- 外観
- 臭気
バイオマス原料の配合量を増やせば、必ず良い材料になるわけではありません。
バイオマス度、物性、成形性、外観、価格のバランスを取りながら、用途に合った配合を設計することが重要です。
成形条件の調整が必要になる場合がある
バイオマスプラスチックは、既存の射出成形機や押出成形機で加工できる場合があります。
ただし、ベース樹脂や配合物によって、乾燥条件、成形温度、射出速度、圧力などの調整が必要です。
量産採用を決める前に、実際の設備と金型を使って成形試験を行い、成形性や完成品の物性を確認することが推奨されます。
バイオマス度とは
バイオマス度とは、製品または材料に、バイオマス由来の成分がどの程度含まれているかを示す指標です。
日本有機資源協会のバイオマスマーク制度では、商品の乾燥重量に対して使用されたバイオマスの乾燥重量の割合を「バイオマス度」としています。マーク内の数字も、このバイオマス度を示しています。
ただし、「バイオマス度が高いほど、すべての面で環境性能が高い」とは限りません。
配合量を増やすことで、
- 強度が変化する
- 流動性が低下する
- 外観が変わる
- 成形条件の調整が必要になる
- 材料価格が上がる
といった影響が生じる可能性があります。
導入時には、数値だけを目標にするのではなく、製品に必要な性能を満たせる範囲でバイオマス度を検討することが大切です。
生分解性プラスチックとは
生分解性プラスチックとは、一定の環境条件下で微生物の働きによって分解され、最終的に水やCO2などへ変化する性質を持つプラスチックです。
ここで重要なのは、「どの環境でも短期間で分解する」という意味ではないことです。
分解速度は、
- 温度
- 湿度
- 酸素の有無
- 微生物の種類
- 土壌・海洋・コンポストなどの環境
によって大きく変化します。
そのため、生分解性プラスチックを採用する際は、「どの環境で、どのような条件で分解させたいのか」を明確にすることが重要です。
主な生分解性プラスチック
生分解性プラスチックには様々な種類があります。
代表的なものとして、
- PLA(ポリ乳酸)
- PBAT
- PBS
- PHA
などがあります。
それぞれ特徴が異なり、用途に応じて使い分けられています。
例えばPLAは植物由来原料を使用した材料として広く利用され、PBATは柔軟性が求められる用途で使用されることが多くあります。
VASUジャパンでも、お客様の用途に応じてこれらの材料を組み合わせたコンパウンドをご提案しています。
生分解性プラスチックのメリット
使用後の処理方法を選択できる
生分解性プラスチック最大の特徴は、「分解すること」が製品の付加価値になることです。
例えば、
- 農業用マルチフィルム
- 育苗ポット
- 土木資材
- 一部の包装材
などでは、使用後の回収作業を軽減できる可能性があります。
特に広い農地では、使用済みマルチフィルムの回収は大きな負担となります。
生分解性材料を採用することで、用途によっては作業効率の改善につながる場合があります。
カーボンニュートラルへの貢献
多くの生分解性プラスチックは植物由来原料を一部または全部に使用しています。
そのため、バイオマスプラスチックと同様に、カーボンニュートラルの考え方と親和性があります。
近年では、生分解性だけでなく、
- バイオマス度
- 再生可能炭素
- LCA
- CFP
と組み合わせて評価されるケースも増えています。
生分解性プラスチックの課題
材料コスト
現時点では、多くの生分解性プラスチックは石油由来樹脂より価格が高い傾向があります。
しかし、単純に材料価格だけを見るのではなく、
- 回収費用
- 廃棄コスト
- 人件費
- ブランド価値
- 環境配慮
まで含めて評価することが重要です。
用途によっては、製品全体としてコストメリットが生まれるケースもあります。
分解条件を理解する必要がある
生分解性プラスチックは万能ではありません。
例えば、
- 海洋
- 土壌
- 家庭用コンポスト
- 産業用コンポスト
では分解条件が異なります。
そのため、「生分解する」という言葉だけで判断するのではなく、どの認証を取得しているか、どの環境を想定した材料なのかを確認することが重要です。
バイオプラスチックはどのような用途で使われている?
近年では、私たちの身の回りでもバイオプラスチックを目にする機会が増えています。
バイオマスプラスチックの主な用途
- レジ袋
- 食品容器
- カトラリー
- 容器包装
- 化粧品容器
- 日用品
- 家電部品
- 文具
また、牡蠣殻や木粉などを配合することで、独自の風合いや質感を持つ製品も増えています。
生分解性プラスチックの主な用途
- 農業用マルチフィルム
- 育苗ポット
- 土木資材
- ごみ袋
- 一部包装材
- フィッシング用品
生分解という機能が製品価値につながる用途で採用が進んでいます。
バイオプラスチックの認証制度
環境配慮型材料であることは、見た目だけでは判断できません。
そのため、国内外では様々な認証制度が整備されています。
日本では、
- バイオマスマーク
- バイオプラマーク
- 生分解性プラマーク
などが広く利用されています。
海外では、
- OK biobased
- OK compost INDUSTRIAL
- OK compost HOME
- DIN CERTCO
などの認証があります。
用途や販売地域によって必要となる認証が異なるため、採用時には事前の確認が重要です。
バイオプラスチック導入で確認したいポイント
バイオプラスチックを導入する際は、環境性能だけで判断するのではなく、製品全体の設計を考える必要があります。
例えば、
- 必要な強度
- 成形方法
- バイオマス度
- 生分解性の有無
- 使用環境
- コスト
- 認証取得の必要性
などを総合的に検討することが重要です。
既製品だけで要求性能を満たせない場合は、OEMコンパウンドによる材料設計という選択肢もあります。
VASUジャパンのOEMコンパウンド
VASUジャパンでは、お客様の用途に合わせたOEMコンパウンドを開発しています。
例えば、
- 強度の改善
- 流動性の調整
- バイオマス度の最適化
- 生分解速度への配慮
- 外観や質感の向上
など、お客様の要求に合わせた材料設計をご提案しています。
また、
- 材料設計
- 試作
- コンパウンド
- ペレット製造
- 量産
まで一貫した体制で対応しています。
小ロット25kgから試作用サンプルにも対応しておりますので、既存材料では実現できない性能をご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
バイオプラスチックは、「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック」を中心とした環境配慮型材料の総称です。
それぞれ目的や特性が異なるため、導入にあたっては、
- 環境性能
- 必要な物性
- 成形性
- コスト
- 使用後の処理方法
を総合的に検討することが重要です。
近年は脱炭素や資源循環への取り組みが加速しており、環境配慮型材料への要求も高まっています。
バイオプラスチックは、単なる代替材料ではなく、製品価値やブランド価値を高める選択肢の一つとして、今後さらに活用が広がることが期待されています。