みなさんこんにちは。気付けば今年もあとわずか。日が経つのはとても早いものですね。さて、過去の記事でも何度か紹介したバイオマスプラスチックですが、今回は、どのように作られているのかを掘り下げて解説していきます。

バイオマスプラスチックとは?
バイオマスプラスチックは、再生可能な資源を原材料に含む新しい素材で、石油由来プラスチックと比較して、地球環境にやさしい素材です。
燃焼時のCO2排出量が少ない
バイオマスプラスチックは、燃焼時のCO2発生量が、石油由来プラスチックと比較して少ないことが実験で証明されています。脱炭素という言葉を聞いたことがあると思います。炭素を含む物質を燃焼させることでCO2が発生しますが、再生可能な資源は、含まれる炭素の量が少ないため、燃焼時のCO2発生量の抑制につながります。
更に、再生可能な資源である植物などが、成長の過程でCO2を吸収して光合成を行いますので、燃焼時にCO2発生量を抑制できることに加えて、育成時のCO2吸収と、2段階でのCO2発生量の抑制が実現できます。育成時のCO2吸収をカーボンニュートラルと呼びます。
石油資源の使用量抑制
再生可能な資源は主に植物などですが、バイオマスプラスチックに含まれている再生可能な資源の割合が大きいほど、新たな石油資源の使用抑制につながります。例えばバイオマス度50%の製品があった場合、本来使われるはずの石油資源を50%分使っていないこととなります。
石油資源の使用抑制は、貴重なエネルギーとしての石油の枯渇リスク低減や、石油資源の採掘から製品化に至るまでのプロセスで発生するCO2発生量の抑制にもつながります。

地球温暖化抑制
これらの特徴を持つバイオマスプラスチックは、地球温暖化の抑制に貢献します。地球温暖化は、CO2に代表される温室効果ガスが大気中に滞留することで、地球が温室に入っている状況を作り出す現象です。地球の温度は太陽光によって生物が生存できる温度に保たれていますが、温室効果によって、地球の温度が上がっているということです。近年の異常な気象は地球温暖化が主な原因とされていいます。
バイオマスプラスチックを活用することで、CO2発生量を抑制し、地球温暖化の抑制ができます。もちろん、バイオマスプラスチック以外にも、リサイクルプラスチック、そもそも製品を使わないといった選択も、地球温暖化の抑制につながります。

バイオマスプラスチックの製造方法
さて、ここからはバイオマスプラスチックの製造方法について、解説していきます。少し聞きなれない言葉も出てきますが最後までお付き合いください。
コンパウンド
バイオマスプラスチックは様々な製造方法がありますが、VASUでは再生可能な資源と石油由来プラスチックをミックスして、バイオマスプラスチックを製造しています。
ミックスといっても、ただ単に混ぜ合わせるだけでは、実用に耐えられるバイオマスプラスチックは製造できません。
様々な原材料を均一にミックスするには、原材料の選び方、ミックス前の前処理、ミックスのタイミングや温度など、様々な要素が複雑に絡み合っています。このように高度なミックスを行うことを「コンパウンド」と呼びます。
VASUでは特許を取得しているコンパウンド技術によって、様々な成形に使用可能な質の高いバイオマスプラスチックを製造しています。
再生可能な資源と石油由来プラスチックのコンパウンド
再生可能な資源といっても様々な種類があります。例えば、サトウキビ、ジャガイモ、お米、トウモロコシなど多岐に渡ります。
お気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、これら全て「食べることができるもの」です。「食べ物を粗末に」と思われることもありますが、実は食用に適さないものが使われています。例えばサトウキビでは、食用にサトウキビを絞った残渣。トウモロコシは工業用のデントコーンと呼ばれる品種などです。
また、VASUでは牡蠣殻も再生可能な資源として活用しています。このことは食用として水揚げされた牡蠣の殻をアップサイクルすることにもなります。
さて、これらの再生可能な資源に対して、石油由来プラスチックにも様々な種類があり、主に用途や成型方法によって適切なものが選ばれます。

ポリプロピレン(PP)
ポリプロピレンは柔らかくしなやかで、熱に強いという特徴から、日用品をはじめ、私たちの身の回りのたくさんのものに使われています。
歯ブラシ、ボトルのフタ、自動車の部品の一部など様々です。
ポリエチレン(PE)
ポリエチレンは吸湿性が極めて低く、透明度が高いという特徴から、フィルムなどの用途で使われることが多いです。
食品包装フィルム、スーパーやコンビニの袋などが挙げられます。
ABS
ABSは聞きなれないかもしれませんが、耐衝撃に優れ、剛性が強いといった特徴があります。
家電製品の筐体や自動車部品、身近なところですと、目覚まし時計の筐体などに使われています。
このように、様々な再生可能な資源と用途に応じた石油由来プラスチックを、実用に耐えられるようにコンパウンドすることで、バイオプラスチックの元が作られます。
再生可能な資源と石油由来プラスチックの組み合わせは多種多様ですが、それぞれコンパウンドの工程や調整が異なりますので、豊富な経験と知見が必要となります。
ペレット化
コンパウンドした状態、つまりミックスした状態は、まだパウダー状です。一部の成型方法では、パウダー状でも成形可能ですが、一般的にはペレット化 = 粒状に加工して、成形工場に納品されます。ペレット化は、押出成形機という成形機を使って行われます。
パウダー状の原料を成形機の中に投入し、成形機内のスクリューで、熱をかけながらしっかりと混錬します。熱をかけることでパウダー状から、まとまりのある棒状になり、成形機から押し出されます。したがって押出成形と呼ばれます。
棒状となり、押し出されたバイオマスプラスチックは、冷却工程の後、細かくカットされ、ペレット状に加工されます。ここでようやくバイオマスプラスチックの完成となります。コンパウンド専業、つまり素材のミックスのみを行う工場もありますが、VASUでは、コンパウンドからペレット化まで一貫して行える設備を有しています。
まとめ
今回は視点を少し変えて、バイオマスプラスチックの製造方法について解説しました。おさらいをすると、再生可能な資源と、石油由来プラスチックをミックスし、成形可能な状態、つまりペレット化するという流れとなります。
このように書くと簡単に感じますが、ミックス = コンパウンドは、非常に奥が深く、専門性の高いノウハウを必要とします。
例えば水と油という言葉がありますが、再生可能な資源と石油由来プラスチックも、ただミックスするだけでは、高い分散性を維持することが難しく、結果、成形品質に影響を及ぼします。VASUではコンパウンドに関する特許を複数取得しており、高い技術を持って、質の高いバイオマスプラスチックをご提供しています。
VASUジャパンでは、小ロット25 kgから、試作用のサンプルをご提供しています。ご希望の方はお申し込みフォームから、お気軽にお問い合わせください。
