技術コラム

牡蠣殻のアップサイクルとは?バイオマスABSへの活用とコンパウンド技術

この記事は2024年6月18日にメールマガジンVol. 15として配信されたものです。
初回投稿日: 2024年9月18日
最終更新日: 2026年7月24日

牡蠣を食べた後に残る、大量の牡蠣殻。
私たちにとっては役目を終えた殻に見えますが、その主成分である炭酸カルシウムは、肥料や土壌改良材、工業材料などへ再利用できる資源でもあります。

VASUジャパンでは、この牡蠣殻を粉末化し、ABSなどの樹脂へ配合したバイオマスプラスチックをご提案しています。
廃棄物として処理される可能性のある牡蠣殻を、新しい製品の原料として活用する。今回は、牡蠣殻のアップサイクルと、プラスチックへのコンパウンド技術についてご紹介します。

牡蠣殻は廃棄物ではなく資源

牡蠣の養殖や加工の現場では、日々大量の牡蠣殻が発生します。

家庭から少量排出される牡蠣殻であれば、自治体の分別方法に従って家庭ごみとして処理できます。しかし、養殖場や加工場から発生する牡蠣殻は量が多く、保管や運搬、処理の負担が課題になります。

一方で、牡蠣殻の大部分は炭酸カルシウムで構成されています。
そのため、適切に洗浄、乾燥、粉砕することで、次のような用途へ再利用できます。

  • 農業用の肥料
  • 酸性土壌を調整する土壌改良材
  • 家畜飼料のカルシウム源
  • 建築材料や舗装材
  • 樹脂へ配合するフィラー

このように、本来は処理の対象となる牡蠣殻を別の製品の原料へ転換する取り組みは、資源循環の一例といえます。

牡蠣殻のイメージ
牡蠣殻

牡蠣殻のアップサイクルとは

リサイクルは、使用済みの製品や廃棄物を再び資源として利用する考え方です。

その中でも、元の状態とは異なる価値や機能を持つ製品へ生まれ変わらせることは、一般的にアップサイクルと呼ばれています。
牡蠣殻を肥料として活用するだけでなく、プラスチックの配合原料として使用し、新しい工業製品へ生まれ変わらせることもアップサイクルの一つです。
牡蠣殻を樹脂へ配合することで、未利用資源の活用につながるだけでなく、石油由来樹脂の使用割合を抑えられる可能性があります。

ただし、牡蠣殻の粉末を樹脂へ加えれば、そのまま良好な材料になるわけではありません。
安定した成形性や製品性能を得るためには、粒径、配合量、分散性、ベース樹脂との相性などを考慮した材料設計が必要です。

牡蠣殻を樹脂へ配合するコンパウンド技術

コンパウンドとは、ベースとなる樹脂へフィラーや添加剤などを混ぜ合わせ、用途に応じた性能を持たせる技術です。

牡蠣殻を樹脂へコンパウンドする際は、単に粉末を混ぜるのではなく、樹脂の中へ均一に分散させることが重要になります。
分散が不十分な場合には、

  • 成形品の外観不良
  • 強度の低下
  • 成形時の流動性低下
  • 配合物の偏り
  • 製品ごとの品質ばらつき

などが起こる可能性があります。

そのため、牡蠣殻の粒子状態や配合割合に合わせて、混練条件や材料の組み合わせを調整する必要があります。
VASUジャパンでは、ABSをはじめ、HIPSやPCなどの樹脂へ牡蠣殻を配合した材料をご提案しています。用途や要求性能に応じて、配合量や流動性、外観などを調整するコンパウンドOEMにも対応しています。

牡蠣殻を配合したバイオマスABS

VASUジャパンが取り扱う「VS-60-2-B2」は、牡蠣殻由来原料を配合した、射出成形向けのバイオマスABSです。

ABSは、強度、耐衝撃性、成形性、外観のバランスに優れ、さまざまな工業製品に使用されています。
そのため、牡蠣殻を配合したバイオマスABSも、次のような用途が考えられます。

  • 電子機器の筐体
  • オーディオ機器の部品
  • 日用品
  • 雑貨
  • 文具
  • ノベルティ
  • 自動車や産業機器の内装部品

今回の表紙に使用しているヘッドフォンドライバーも、VS-60-2-B2を用いて射出成形した製品例です。
ヘッドフォンのような身近な製品の小さな部品にも、牡蠣殻を活用した材料を採用できます。

環境配慮型素材というと、用途や性能が限定される印象を持たれることがあります。しかし、ベースとなる樹脂や配合設計を適切に選ぶことで、一般的なプラスチック製品への導入を検討できます。

バイオマスマークの取得を検討できる

牡蠣殻は、生物由来の資源として取り扱われる場合があります。

製品の原料構成や基準への適合状況によっては、日本有機資源協会が運営するバイオマスマークの認定を検討できます。
バイオマスマークは、生物由来の資源を活用し、一定の基準を満たした商品に表示できる認定マークです。

製品へ環境配慮型素材を採用するだけでなく、第三者認証を取得することで、取引先や消費者に取り組みを伝えやすくなる場合があります。
ただし、認定は材料を使用するだけで自動的に取得できるものではありません。最終製品の原料構成やバイオマス度などを確認し、申請手続きを行う必要があります。

牡蠣殻配合材料を導入する際のポイント

牡蠣殻を配合したプラスチックを製品へ導入する際は、環境面だけでなく、実際の製品性能とのバランスを確認することが重要です。
主な確認項目には、次のようなものがあります。

  • 必要な強度や耐衝撃性を満たせるか
  • 成形機や金型に適した流動性があるか
  • 表面の質感や色調は製品に合っているか
  • 牡蠣殻の配合量をどこまで高めるか
  • 既存材料から置き換えた場合のコスト
  • バイオマスマークなどの認証が必要か

環境性能を最大化することだけが、必ずしも最適な材料設計とは限りません。

製品に必要な性能、量産時の安定性、コスト、環境価値のバランスを見ながら配合を決めることが大切です。

まずは小ロットの試作から

新しい材料を導入する際、最初から量産規模で採用することは簡単ではありません。
特にフィラーを配合した樹脂は、既存材料と比較して、

  • 成形温度
  • 射出速度
  • 保圧
  • 金型温度
  • 外観
  • 収縮率

などに違いが生じる場合があります。

そのため、最初に少量の材料で試作成形を行い、成形性や製品性能を確認する方法が現実的です。
VASUジャパンでは、25kgからの試作用樹脂のご提供に対応しています。試作結果をもとに、牡蠣殻の配合量や材料物性を調整し、量産へ向けた材料設計を進めることも可能です。

まとめ

牡蠣殻は、食後に残る廃棄物ではなく、炭酸カルシウムを主成分とする有用な資源です。

肥料や土壌改良材としてだけでなく、ABSなどの樹脂へコンパウンドすることで、電子機器や日用品などの原料として活用できます。
ただし、牡蠣殻を配合するだけでは、安定した材料にはなりません。

粒子の分散、配合量、流動性、強度、外観などを調整し、製品の用途に適した材料へ設計することが重要です。
VASUジャパンでは、牡蠣殻を配合したバイオマスABS「VS-60-2-B2」をはじめ、用途や要求性能に応じたコンパウンドOEMをご提案しています。
既存材料からの置き換えや、地域資源を活用した製品開発、バイオマスマークの取得をご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。

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「自社製品でも使えるのか?」という段階でも構いません。
VASUジャパンでは、バイオマスプラスチック・生分解性プラスチック・コンパウンドOEMなど、用途に合わせた材料提案を行っています。

  • 試作用材料を25kgからご提供
  • 既存設備での成形を前提に相談可能
  • 強度、流動性、外観、バイオマス度などを調整可能

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