みなさん、今年の夏は本当に暑かったですね。気温が35度以上の日を猛暑日と言いますが、観測史上最多だったそうです。そうかと思えば秋かと思うような冬に近い気温。服装選びにも頭を悩ますこの頃ですが、体調管理にはぜひともお気をつけください。
さて今回は、ネットやニュースなどで聞く機会が増えてきた、「GHG」「LCA」「スコープ」について解説したいと思います。
通勤電車で熱心に読書をされている方の表紙が少し見え「スコープ1」と書かれていました。ネットやニュースはもちろんですが、環境関連のお仕事をされている方はもちろん、企業のIR部門や広報部門の方も、これらの用語を目にする機会が増えているのではないでしょうか。
GHG
GHGとは?
GHGとは、英語のGreenhouse Gasの略で、日本語で言うところの、温室効果ガスのことを指します。ちなみにGreenhouseは英語でも植物などを育てる温室のことを指しますので、それにGasと続けるのは、日本語の温室効果ガスの組み合わせと全く同じですね。
そもそも温室効果という言葉は何を指すのかですが、実は地球が温室に入っているイメージなのです。みかん狩りにいちご狩りに、一般の消費者の方でも温室に入った経験がある方は多いと思います。時期にもよると思いますが、その名の通り暖かい空間です。現在の地球の気温がある程度一定に保たれているのは、実は温室効果のお陰、もう少し丁寧に言えば、温室効果と地球に降り注ぐ太陽光のお陰です。
昨今の気温の変化を肌で感じてお分かりかと思いますが、少し暑くなっても、少し寒くなっても、地球の環境が変わることは想像にやすいと思います。現在保たれている気温は、まさに奇跡的なバランスと言っても過言ではありません。地球に降り注がれた太陽光は、地表まで到達して反射し、宇宙空間に再び帰っていきますが、CO2をはじめとした温室効果ガスは、大気に温室効果を生み出し、宇宙空間に太陽光が帰っていく妨げとなります。
このことが原因で、地球温暖化になっていると言われています。ただし先ほども述べたように、適度な温室効果は地球に人類が住みやすい環境を作り出してくれますが、過度な温室効果は、地球温暖化を急速に進めることになります。ちなみに、温室効果ガスと聞くと、まずCO2のことをイメージするかと思いますが、CO2以外にも温室効果ガスは多くの種類があり、例えばメタンやフロンなどもその一つなのです。
GHGプロトコル
さて、GHGが温室効果ガスの事だと分かったところで、次にGHGプロトコルです。こちらは、GHGの排出量の算定や報告に関する基準のことを指します。簡単言えば、温室効果ガスがどれだけ排出されているか、それを可視化するための、計算などの基準ということです。
最近で始めた言葉かと思えばその歴史は古く、1998年に、持続可能な開発のための世界経済人会議 (WBCSD) で作られました。
1998年といえば今から26年前、つまり四半世紀前ということにも驚きますが、その時から既に「持続可能」という言葉が使われているのにも驚かされます。
スコープ1 2 3
最近ですと、GHGプロトコルよりも、スコープ1、スコープ2、スコープ3といったキーワードの方が、馴染みがあることと思います。次号以降で解説しますが、日本でも様々な枠組みで、GHGを算出する必要性が出始めており、その算出方法はGHGプロトコルを参照しています。GHG、つまり温室効果ガスの排出の区分として、スコープ1、スコープ2、スコープ3が定められています。
スコープ1
スコープ1は、企業が直接排出するGHGを指します。つまり何らかの燃料を燃焼させるなど、製品やサービスの製造などを通して、直接排出するGHGのことです。例えば製品メーカーが製品の製造に石炭や灯油などの燃料を燃焼させ、熱で加工をする場合などが該当します。
スコープ2
スコープ2は、企業が間接的に排出するGHGを指します。電気、熱などを他社から供給され、それを使う場合がこのケースに該当します。例えば製品メーカーが製品の製造に電気を使って機器を運転させ、何らかの加工を行う場合などが該当します。
スコープ3
スコープ3は、平たく言えばスコープ1とスコープ2以外のGHGを指します。例えば原材料を仕入れる過程や販売する過程、つまり輸送時のGHGや、従業員の出勤や通勤も含まれます。
このように、企業の事業を通じて排出されるGHGの算出基準を網羅的に定めているのがGHGプロトコルで、その中に設けられた区分が、スコープ1、スコープ2、スコープ3ということです。
LCA
LCAとは?
LCAはLife Cycle Assessmentの略で、製品やサービスがライフサイクル全体、つまり製造されてからその役目を終え、廃棄されるまでを通した、温室効果ガスによる環境負荷を算出する概念です。製品の製造、使用、廃棄に至るまでの、各フェーズにおける環境負荷を包括的に分析して、排出される温室効果ガスの総量を算出し、製品やサービスがどの程度の温室効果ガスを排出しているかを把握します。
同じような概念に、マーケティング用語でLTVというものがあります。こちらは、Life Time Valueの略で、新しい顧客と取引が始まり、取引が終わるまでの利益を表す概念です。両者共に、ライフタイム、つまり始まりから終わりまで全体を通じてという考え方です。
LCAで何ができるの?
LCAの算出について具体的な例を示すと、原材料の仕入れ、工場での製造や加工のプロセス、工場から出荷された後の流通の段階、消費者の手元に届き製品を使用する段階、役目を終えて廃棄される段階と、文字通り、ライフサイクル全体を包括的に分析します。
これら全ては、私たちが普段当たり前のように使っている製品やサービスが、どの程度の温室効果ガスを排出し、どの程度地球温暖化に影響があるのかを可視化することで、政府や企業、個人ももちろんですが、温室効果ガス削減の戦略を立てることなどに使用されます。
例えば原材料の温室効果ガスの排出量が多い場合、他の素材への変更を検討する判断材料になります。また、輸送の段階での排出量が多いのであれば、代替手段や輸送スパン、他社との共同便など、様々な視点で改善の検討をすることが可能になります。重要な点は可視化することで、今まで何となく「環境に悪そう」と考えていたことを、正しく数値で知ることができるので、具体的な改善アプローチに繋げることができるという点です。
LCAによる企業の評価
また、企業としてLCAを示すことは、持続可能な取り組みを、適切に行なっているかどうかの、市場に対しての判断材料になるため、投資家が正しい判断をする材料にもなります。「自社のLCAを開示しなければならない」と聞くと、行政や世間からの非難のネタになるとも考えられますが、私はこれは逆だと考えています。
持続可能というキーワード
突然ですが、地球は果てしなく広いです。一企業が、一個人が取り組みをしても、大きな変化は生まれないと考えてしまいがちですが、持続可能という言葉は、個人や企業が存続、つまり営みが持続可能であるかと考えることができます。地球温暖化が進んでいる現在、もしかすると、企業どころか、人類も持続して存続できないかもしれません。そう考えると、非常に重要な取り組みであることが理解できます。
例えばLCAを見て改善できるポイントが可視化されれば、事業を今後何十年も持続させるための課題が見つかったと捉えると、これはチャンスだと考えることができます。断定はできませんが、その課題を放置すると、持続できない未来があるかもしれません。
「持続可能を目指して」と見聞きすると、耳あたりの良いキャッチフレーズのようにも聞こえますが、企業が事業を持続的に継続できるかどうか、例えば、枯渇する可能性のある資源を使い続けていては、その事業は継続できませんし、何の工夫もなく温室効果ガスを垂れ流しにしていたら、世界規模で村八分となるかもしれません。そう言った意味でも、持続可能な取り組みは重要なことと言えます。
尚、同じような枠組みを指す言葉で、カーボンフットプリント (CFP) というものがあります。LCAとCFP、どちらとも温室効果ガスを包括的に算出する仕組みですが、カーボンフットプリントは、温室効果ガスが地球温暖化に与える影響のみを対象としているのに対して、LCAは、例えば砂漠化、資源の枯渇など、地球温暖化以外の影響も対象としているという違いがあります。
次号以降では、今回解説したGHGやLCAと法律の関連など解説したいと思います。
持続可能なバイオプラスチック
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