この記事は2024年7月17日にメールマガジンVol. 16として配信されたものです。
初回投稿日: 2024年10月16日
最終更新日: 2026年7月24日
環境配慮型素材として、「バイオプラスチック」という言葉を耳にする機会が増えました。
レジ袋や食品容器、ストロー、カトラリーといった身近な製品だけでなく、家電、自動車、農業資材、包装材など、幅広い分野で導入が検討されています。
しかし、バイオプラスチックについては、
「植物から作られたプラスチック」「自然の中で分解するプラスチック」「燃やしても二酸化炭素が出ないプラスチック」
など、異なる性質が一つの言葉で語られることも少なくありません。
実際には、バイオプラスチックは大きく「バイオマスプラスチック」と「生分解性プラスチック」に分けられ、それぞれ原料や機能、適した用途が異なります。
この記事では、バイオプラスチックの種類、従来のプラスチックとの違い、メリットとデメリット、導入時の注意点について分かりやすく解説します。
バイオプラスチックとは?

バイオプラスチックとは、一般的に次の2つのプラスチックの総称です。
- 再生可能な生物由来資源を原料として使用する「バイオマスプラスチック」
- 微生物の働きによって最終的に分解される「生分解性プラスチック」
日本バイオプラスチック協会も、バイオプラスチックをバイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの総称としています。
ここで重要なのは、原料に関する性質と、使用後の分解性は別のものだという点です。
植物由来であっても生分解しないプラスチックがあります。一方、生分解性プラスチックの中には、化石資源由来の原料を含むものもあります。
つまり、
- バイオマス由来だから生分解するとは限らない
- 生分解するから100%植物由来とは限らない
ということです。
バイオマスプラスチックとは?
バイオマスプラスチックは、植物などの再生可能な生物由来資源を原料として使用するプラスチックです。
バイオマスとは、化石資源を除く、再生可能な生物由来の有機性資源を指します。
原料の例として、次のようなものがあります。
- サトウキビ
- トウモロコシやキャッサバなどのデンプン
- 木材やセルロース
- 植物油
- コーヒーかす
- 卵殻や貝殻などの未利用資源
例えば、サトウキビから得られるエタノールを原料として製造されるバイオポリエチレンや、デンプンなどを原料とするPLAが知られています。
また、植物粉末や牡蠣殻などのバイオマス原料を、PP、PE、ABSなどの樹脂へ配合したコンパウンド材料もあります。
バイオマスプラスチックは、すべてを生物由来原料へ置き換えたものだけではありません。
石油由来樹脂の一部をバイオマス原料へ置き換えた材料も多く、バイオマス度は製品によって異なります。
生分解性プラスチックとは?
生分解性プラスチックは、微生物の働きによって分子レベルまで分解され、最終的に二酸化炭素や水などへ変化する性質を持つプラスチックです。
ただし、生分解性プラスチックは、どのような場所でもすぐに分解するわけではありません。
分解の進み方は、次のような条件によって大きく変わります。
- 温度
- 湿度
- 微生物の種類と量
- 酸素の有無
- 土壌、淡水、海水、堆肥化設備などの環境
- 製品の厚さや形状
- 材料の種類
例えば、産業用コンポストで分解する材料が、家庭の庭や海の中でも同じ速さで分解するとは限りません。
そのため、生分解性プラスチックを導入する際は、「生分解性があるか」だけでなく、どの環境で、どの程度の期間で分解するよう設計されているかを確認する必要があります。
バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの違い
両者の違いを簡単にまとめると、次のようになります。
| 種類 | 主に表しているもの | 必ず生分解するか | 主な目的 |
| バイオマスプラスチック | 原料の由来 | しない | 化石資源使用量の低減 |
| 生分解性プラスチック | 使用後の分解機能 | する | 回収・廃棄負担の軽減 |
| バイオマス由来の 生分解性プラスチック | 原料と分解機能の両方 | する | 化石資源低減と分解機能の活用 |
例えば、バイオポリエチレンは植物由来原料を使用できますが、一般的なポリエチレンと同様に自然環境では容易に生分解しません。
一方、PBATは生分解性を持つ材料ですが、一般的には化石資源由来の成分を含みます。
PLAのように、バイオマス由来であり、生分解性も持つ材料もあります。
ただし、PLAも分解条件によっては長期間形状を保つため、環境中に放置すれば短期間で消えるという意味ではありません。
身近なバイオプラスチック製品

バイオプラスチックは、すでにさまざまな製品へ採用されています。
代表的な用途には次のようなものがあります。
- レジ袋やごみ袋
- 食品容器
- 包装フィルム
- ストローやカトラリー
- ホテルのアメニティ
- 農業用マルチフィルム
- 育苗ポット
- 文房具や日用品
- 家電や電子機器の筐体
- 自動車内装部品
ただし、レジ袋の有料化やホテルアメニティの提供方法の変更が、すべてバイオプラスチックへの切り替えを意味するわけではありません。
これらの取り組みは、プラスチック製品の使用量そのものを減らす「リデュース」や、再利用、再資源化を含む資源循環施策の一部です。
2022年4月に施行されたプラスチック資源循環法では、製品設計から使用、回収、リサイクルまで、プラスチックのライフサイクル全体で資源循環を進めることが求められています。
環境対応では、単純に従来品をバイオプラスチックへ置き換えるだけでなく、
- 使用量を減らす
- 長く使える設計にする
- 回収しやすくする
- 再生材を利用する
- バイオマス原料を利用する
- 適切な用途で生分解性を活用する
といった複数の方法を組み合わせることが重要です。
従来のプラスチックとの違い
従来のプラスチックの多くは、石油や天然ガスなどの化石資源を原料として作られています。
石油を精製して得られるナフサなどから基礎化学品を製造し、さらに重合などの工程を経て、PE、PP、PS、ABSなどの合成樹脂が作られます。
従来のプラスチックは、軽量、耐久性、成形性、量産性、コストなどに優れており、自動車、住宅、家電、医療、物流、食品包装など、現代の生活を支える幅広い用途で使われています。
その一方で、化石資源由来のプラスチックを焼却すると、原料に含まれる炭素が二酸化炭素として大気中へ排出されます。
バイオマスプラスチックは、化石資源の一部を再生可能な生物由来資源へ置き換えることで、化石資源への依存や温室効果ガス排出量の低減を目指す材料です。
ただし、バイオプラスチックも原料生産、輸送、加工、成形、廃棄などの各段階でエネルギーを使用します。
そのため、「バイオプラスチックであれば必ず環境負荷が小さい」と一律には判断できません。製品のライフサイクル全体を見て評価することが大切です。
バイオプラスチックのメリット

化石資源の使用割合を抑えられる
バイオマスプラスチックの大きなメリットは、石油などの化石資源の使用割合を抑えられることです。
すべてをバイオマス由来原料へ置き換えることが難しい製品でも、植物由来樹脂や天然由来フィラーを一部配合することで、化石資源の使用量を段階的に減らせます。
既存製品に求められる性能を維持しながら、バイオマス度を調整する方法もあります。
温室効果ガス排出量の低減が期待できる
植物は成長過程で大気中の二酸化炭素を吸収します。
そのため、植物由来原料に含まれる炭素は、化石資源由来の炭素とは異なる炭素循環として捉えられます。この考え方が、一般的にカーボンニュートラルと呼ばれています。
ただし、バイオマスプラスチックの製造や輸送、加工、焼却の過程では二酸化炭素が排出されます。
したがって、製品全体の排出量が自動的にゼロになるわけではありません。
原料の調達方法、バイオマス度、製造エネルギー、輸送距離、製品寿命、使用後の処理方法などを含めて評価する必要があります。
未利用資源を有効活用できる
バイオマスプラスチックでは、これまで廃棄されていた資源を原料として利用できる場合があります。
例えば、
- 牡蠣殻
- 卵殻
- コーヒーかす
- 麦わら
- 竹粉
- 木粉
- セルロース
- 食品加工残渣
などです。
こうした未利用資源を樹脂へ配合し、新しい製品の材料として活用することは、アップサイクルや地域資源の循環につながります。
回収や廃棄作業を軽減できる場合がある
生分解性プラスチックは、回収が難しい用途や、使用後に有機物と一緒に処理する用途で効果を発揮します。
代表例が、生分解性農業用マルチフィルムです。
通常のマルチフィルムは、使用後に農地から回収し、付着した土を取り除いて処分する必要があります。
適切な土壌生分解性を持つマルチフィルムであれば、使用後に土へすき込めるため、回収作業の負担を軽減できる可能性があります。
環境省のロードマップでも、生分解性プラスチックは、農業用マルチフィルムや肥料の被覆材、生ごみ収集袋など、分解機能によって廃棄処理を合理化できる用途への利用が示されています。

企業の環境対応を具体的に示しやすい
バイオプラスチックの採用は、企業の環境方針を製品として具体化する方法の一つです。
例えば、
- 化石資源使用量の削減
- バイオマス度の表示
- 未利用資源の活用
- 地域資源との連携
- 環境配慮型製品の開発
- バイオマスマークなどの認証取得
といった形で、取引先や消費者へ取り組みを伝えやすくなります。
ただし、環境価値を伝える際は、原料や配合率、認証、算定方法などを明確にし、過度な表現を避けることも重要です。
バイオプラスチックのデメリット

従来材料より価格が高くなる場合がある
バイオプラスチックは、一般的な石油由来樹脂よりも価格が高くなる場合があります。
その要因には、
- 生産量がまだ限られている
- 原料の前処理が必要
- 製造工程が複雑
- 認証や品質管理に費用がかかる
- 原料価格や輸送費の影響を受ける
といった点があります。
ただし、材料単価だけで判断するのではなく、製品価値、環境目標、作業削減効果、認証取得、ブランド価値なども含めて検討する必要があります。
生分解性農業資材のように、材料価格は上がっても回収作業を減らせるため、全体の作業コストを抑えられる場合もあります。
材料によって物性が異なる
バイオプラスチックも、一般的なプラスチックと同様に、材料ごとに異なる特性を持っています。
材料や配合によっては、
- 耐熱性
- 耐衝撃性
- 耐水性
- 耐久性
- 流動性
- 寸法安定性
- 外観
などが従来材料と異なる場合があります。
例えば、現在使用しているABSを、単純にPLAへ置き換えても、同じ性能や成形性が得られるとは限りません。
置き換えを検討する際は、製品に必要な性能を整理し、その用途に適したベース樹脂や配合を選ぶことが重要です。
成形条件の調整が必要になる場合がある
多くのバイオプラスチックは、既存の射出成形機、押出機、ブロー成形機などで加工できます。
一方で、従来材料と比べて、
- 乾燥条件
- 成形温度
- 金型温度
- 射出速度
- 保圧
- 冷却時間
- スクリュー条件
などの調整が必要になる場合があります。
天然由来の粉末や繊維を配合した材料では、分散状態や吸湿、熱による変色などにも注意が必要です。
量産前に少量で試作成形を行い、成形性、外観、物性、金型への影響などを確認することが大切です。
生分解性を発揮できる環境が限られる
「生分解性プラスチックは、捨てればどこでも自然に消える」という理解は正しくありません。
産業用コンポスト向け、家庭用コンポスト向け、土壌向け、海洋向けなど、材料や認証によって対象となる環境が異なります。
また、生分解するまでには一定の時間が必要です。
一般ごみやリサイクル回収へ混入した場合、既存の処理や再資源化に影響を与える可能性もあります。
生分解性は、ポイ捨てを前提とした機能ではなく、適切な用途と処理方法を選んで活用する機能です。
リサイクルとの相性を確認する必要がある
バイオマスプラスチックの中には、既存の石油由来樹脂と同じ化学構造を持ち、既存のリサイクル工程と調和しやすい材料があります。
一方で、異なる種類の樹脂や天然由来フィラー、生分解性樹脂が混入すると、再生材の品質へ影響することがあります。
環境省も、バイオプラスチックの導入では、生分解性などの機能だけでなく、リサイクルとの調和を考慮する必要があるとしています。
導入時には、製品の回収方法や廃棄経路まで含めて材料を選ぶ必要があります。
バイオプラスチックを導入する際のポイント
バイオプラスチックは、環境対応という理由だけで選ぶのではなく、製品の用途に合わせて設計することが重要です。
検討時には、次の項目を整理します。
導入目的を明確にする
まず、何を実現したいのかを明確にします。
例えば、
- 化石資源の使用量を減らしたい
- 製品のバイオマス度を高めたい
- 未利用資源を活用したい
- 使用後の回収作業を減らしたい
- 生分解機能を活用したい
- 環境認証を取得したい
- 顧客の調達基準に対応したい
などです。
目的によって、選ぶべき材料は変わります。
必要な製品性能を整理する
次に、製品に必要な性能を確認します。
- 強度
- 耐衝撃性
- 耐熱性
- 耐水性
- 耐候性
- 流動性
- 外観
- 色
- 寸法精度
- 製品寿命
環境性能を高めることだけを優先すると、製品本来の機能を満たせなくなる可能性があります。
必要な製品性能と環境価値のバランスを取ることが大切です。
使用後の処理方法を確認する
バイオプラスチックを導入する際は、製品を使用した後に、
- 回収するのか
- 再使用するのか
- マテリアルリサイクルするのか
- 堆肥化するのか
- 土壌へすき込むのか
- 焼却するのか
まで考える必要があります。
使用後の処理方法と材料の特性が合っていなければ、期待した環境効果を得られません。
小ロットで試作評価する
新しい材料を採用する場合は、量産前の試作が重要です。
少量の材料を使って、
- 既存設備で成形できるか
- 成形条件をどこまで変更する必要があるか
- 製品強度を満たすか
- 外観や色に問題がないか
- 量産時に安定するか
を確認します。
試作結果に応じて、バイオマス原料の配合量、添加剤、流動性、強度などを調整することで、製品に合った材料へ近づけられます。
バイオプラスチックの今後
日本政府が2019年に策定したプラスチック資源循環戦略では、「3R+Renewable」を基本原則として掲げています。
3Rとは、
- Reduce:使用量を減らす
- Reuse:繰り返し使う
- Recycle:資源として再利用する
という考え方です。
これに、再生可能な資源へ置き換えるRenewableを加え、プラスチックの資源循環を進める方針です。
また、2021年に策定されたバイオプラスチック導入ロードマップでは、2030年までにバイオマスプラスチックを最大限、約200万トン導入する目標が示されています。
日本バイオプラスチック協会による2023年の国内市場規模推計では、バイオマスプラスチックが約10.4万トン、生分解性プラスチックが約7.9万トンとされています。
2030年の目標との間には依然として大きな差がありますが、容器包装や使い捨て製品だけでなく、家電、自動車、建材、農業資材などへの広がりが期待されています。
ただし、すべてのプラスチックをバイオプラスチックへ置き換えれば問題が解決するわけではありません。
製品の長寿命化、使用量の削減、再使用、リサイクル、再生材、バイオマス原料、生分解性などを、用途に応じて組み合わせていく必要があります。
バイオプラスチックの今後
バイオプラスチックは、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの総称です。
バイオマスプラスチックは主に原料の由来を表し、生分解性プラスチックは使用後の分解機能を表します。
両者は同じものではなく、植物由来でも生分解しない材料や、化石資源由来でも生分解する材料があります。
バイオプラスチックには、
- 化石資源使用量の低減
- 温室効果ガス排出量の低減
- 未利用資源の活用
- 回収や廃棄作業の軽減
- 企業の環境対応の可視化
といったメリットがあります。
一方で、
- 材料価格
- 物性の違い
- 成形条件の調整
- 分解環境の制約
- リサイクルとの調和
などの課題もあります。
大切なのは、「環境に良さそう」というイメージだけで材料を選ぶのではなく、製品の用途、必要性能、製造方法、使用期間、廃棄方法まで含めて適切な材料を選ぶことです。
VASUジャパンでは、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの両方を取り扱い、射出成形、押出成形、ブロー成形、インフレーション成形など、さまざまな成形方法に対応した材料をご提案しています。
強度、耐熱性、流動性、外観、バイオマス度、生分解速度など、製品の要求仕様に合わせたコンパウンドOEMにも対応しています。
既存材料からの置き換えや、環境配慮型製品の開発をご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。